懐かしの鉄路
表紙です。
タイムマシーンの試運転で、昔の昔に戻る久保田博士。そこには過去の辛い思い出があった。
定められた運命に逆らうが・・・。
鉄道の中に昔の思い出を求めた作品です。
キャラ設定
久保田博士 久保田美佐子(今) 与田主任 久保田良子
トリップマシーン「ラビット
ホール」発明者。自分を実
験台にする。かなりの苦労
人だ
久保田博士の妻。博士
とは幼馴染でもある。
実験についていく。
博士の助手。実験では
機械操作を担当する
女手一つで武を育て上げる
タイムマシーン完成時には
なくなっていたようだ。
久保田武 根木美佐子(昔) 久保田博 根木正子
前回とはキャラ変更
中日ドラゴンズの帽子
かぶってるあたり地元っぽい
博士の子どものころ。ト
リップ先は父を亡くす当日
だった。鉄道ファンの彼は
最後の日、父との思い出
をつくる。同時に悲劇の
運命にさかろうとする。
妻美佐子も同じ日母を
交通事故で亡くす。同じく
人生の悲劇を覆そうとする。
実際とは違い10歳の誕
生日プレゼントは渡される。
しかし・・・。
昭和のお父ちゃん。会
社の社長だ。脳溢血で
死んだあと会社は倒産。
一家は崩壊する。
一方昭和のお母さん。
美佐子の母。交通事故で
なくなる。
中に出てくる電車たち(イラストは下書き。電車は時間がかかるので先行させてます)
国鉄の飯田線の車両 名鉄7000系 名鉄8000系 名鉄850系 国鉄クモハ52
豊橋駅風景。飯田線の旧型国電というとこれ。
80系とクモハ53あたりか?
名鉄7000系パノラマカー。7500系という型はもう引退している。前面の席からの眺望が売りだ 急行「北アルプス」として国鉄高山線に
乗り入れる。当時唯一私鉄で急行として
乗り入れする気動車
旧名岐の名車。ナマズと呼ばれ人気
があった。設定の’78あたりで岡崎に
いたかどうか不明。ひとまず外した
最後の引退間近になった名車。’78年
11月引退する。最後の〆となる。
名鉄3400系 名鉄800系 名鉄5200系 名鉄5500系
こちらは「いもむし」と呼ばれる車両。人気があり戦前製というのに廃車までに冷房化され、平成11年だったかな?廃車になった。 名岐特急用につくられた名車。筆者の
幼い頃当たり前に走っていた。
名鉄初の高性能車両。でも非常にマイナー。
名鉄ファンでもなかなか出てこない車両
料金不要の冷房付き通勤車の先がけ。もう引退したが個性的な話題が多かった車両。今のところ出てこないが名鉄で外せない車両。出すかも。
3800系 7300系 名鉄バス
この話は自分の経験を参考にしています。ですからあまり大きな話はできません。鉄道ものはドキュメントに近いからです。全く経験なしでは
かなり間違えがでます。ですから、今後展開するなら限られます。岐阜市内線、近鉄、JRの北陸線など。本職の鉄道ファンに笑われるかも
しれないけど、昭和回顧のノスタルジーのもやってみたかったのです。モナー大好きの言うには「電車撮影だけでいいんじゃない?」だそうです。
でも他にストーリーつけた方が一般向けと思いこのスタイルにしました。ともかく電車そのものの作品が少ない。「銀河鉄道999」で育った世代なら
余計そう思います。この話昔を思う人向けなので、次回があるなら全く登場人物と思いは全く変わります。たまには昭和を感じてもらえればと思い
書きました。今は鉄子、鉄雄ブームらしい。少しでも貢献できればいいと思います。上の写真の車両は本番にはすべて描きます。
皆さん、過去には興味ありますか?過ぎ去った事ぐちぐちいっても始まらない。そうは思っても実際過去に帰れる可能性を目の前にしたら、そう言い続けれますか?やはり過去は過去、でも時間軸が現実になったら精一杯の努力をしようとおもうものではないでしょうか?
タイムマシーンとワープはよくSFで目にします。これはアインシュタインの相対性理論です。ただブラックホール並みのエネルギーを必要とし、過去に戻るというのは現実軸との矛盾があり実際不可能と思います。検証で時間のゆがみは証明されてるようです。どちらも可能な話ではあるでしょうけど実用的ではないと思います。そう割り切るとつまらないので、夢はみたいですし、憧れのマシーンです。
そんな中、別の観点からのアプローチが始まりました。人間があこがれる過去は、その人の主観の憧れであり、それならば、そのひとの記憶の過去に入り込むことで望みを叶えるというもので大げさな装置の不要なコンビニ過去体験マシーンです。もしたらればが、通れば堕落するでしょう?タイムマシーンという言葉が物理学から医工学の範疇にかわるかも。絶対不可能なタイムマシーンより、限定的な過去訪問ができるものがあれば人類の悔みが少しは軽くなるかも。
そんな中この「年輪プロジェクト」のリーダー久保田博士はトリップマシーン「ラビットホール」を見ていた。ラビットホールは不思議の国のアリスが不思議世界に入る入口から名がつけられた。
見たとこただの部屋である。イスがあり荷物置きがある。上にはお約束の電極付きのヘッドギアがあるだけだ。研究所には小学生たちが見学に来ていた。
小学生A「これがタイムマシーン?イメージ違うよ。とらえもんのやつ見たいのじゃないの?」
久保田博士「これは人間だけが過去に戻るマシーンだよ。実際の過去はいけないんだよ。」
小学生B「おもしろくないな。僕恐竜見たい!。」
小学生C「あたしは侍がいいな。かっこいいんでしょ?」
久保田博士「君たちのいうものじゃないんだ。昔の自分に戻るものだよ。」
そう、小学生に「昔の自分」などない。今からの人たちだ。子供の夢のものになりえない。皮肉を感じた。見学も終わり、研究所も静かになった。だが、このマシーン、つくられてもまだ試運転をしていない。動物実験で猿にやってみたら何の変化もなかった。過去という概念は人間だけのものなのか?博士はマシーンを見た。
久保田博士「与田君、実験準備をしてくれ。」
与田主任「実験ですか?今度は何の動物で?」
久保田博士「動物ではない。何千回やっても同じだ。検証は人間で行う。」
与田主任「えー、バカなこと言わないでください。成功するかリスクが高すぎます。精神をいじくるのです。精神崩壊して狂人化するかもしれません。」
久保田博士「与田君、」
ちょっと博士の顔が険しくなった。与田のいうことも意味はわかる。
久保田博士「これは誰のための機械ですか?人間が使えなければ意味はない。」
与田主任「でも、実験台になる人はいませんよ。得体のしれないものなんですから。」
こういう話になると話は露骨だ。自信のなさがあらわだ。
久保田博士「与田君、このマシーンの性能は熟知している。信頼性も保証できる。そもそも人間に使うものを人間が使えないんじゃおかしいだろ。おれの自信作だ。」
与田は長年博士のもとで研究したもの。いいたいことはわかった。
久保田博士「検体は私だ。私ならいいデータがとれるぞ。」
与田主任「わかりました。準備始めます。」
久保田博士「そういうことだ。美佐子よ。いってくる。」
美佐子は久保田博士の妻だ。助手をしている。幼馴染で一緒に人生を歩んだ。
美佐子「いいんじゃない?武君の夢だからね。」
武とは久保田博士の名前。60歳を超えた二人。お互いになにもかもわかっている。
美佐子「でもどこに行こうというの?私もついていく。」
興味本位というより非常事態を見てるより、ともにしたいのだ。
久保田博士「そうだな、過去に戻るか・・・ないな。」
久保田博士は幼いころに父を亡くし苦労ぶりは有名だった。過去など忘れておりたい。
久保田博士「もどれるなら、俺の趣味の鉄道写真かな?それこそ過去に消えていった者たちだ。追いかけることができるならそれがいい。」
この「ラビットホール」をタイムマシーン扱いしてるのはデータをなぞるだけでない。中でいろんな行動ができる。道具を持って中で使うことができる。カメラを持って中で撮り、この現在に持ってくることもできる。またそこで買ったりしたものを持ってくることもできる。今あるはずのないものが出現するのでタイムマシーンなのだ。ただ、その人のデータなのでそれ以上遡れない。しかし、もしかしたら発掘の遺体からのトリップもありうるかもしれない。DNAを膨大なデータベースの入口と考えるというものです。刻まれた記憶をトレースしたら、歴史の謎を解決できるかもしれない。過去は無限の可能性を秘めていた。その時は一気に過去へのタイムマシーンといえる。
なんだかんだで準備はできた。トリップ先は1978年。美佐子もついてくる。持ち物はカメラ、当時のお金、着替え。そうそう持病の高血圧の血圧降下剤も持っていく。高血圧は久保田家の持病。父も高血圧による脳溢血で死んだ。自分のためにもっていく。何が起こるかわからない。
マシーンにはいりこむ。SFのようなかっこいいものじゃない。ただ椅子に座って電極を付ける。今は脳への働きかけるが、今後は細胞レベルで働きかける方針だ。
美佐子「ねえ、あっちに行ってもあえるんでしょ?」
久保田博士「心配するな俺が作ったマシーンだ。」
シンクロによって同時に入り込むことはできる。ただで会えるかは予想できない。
久保田博士「現在2028年11月9日13:00。今より記録開始する。」
手にあった記録MDを起動する。目の前の風景は変わらない。しかし手が痙攣してきた。全身に震えが広がる。与田主任の姿がかすむ。
久保田博士「意識レベル5。人体は負担に耐えられる・・・はず。美佐子は?」
見ることもなく眠るように意識が飛ぶ。

気づくと布団に寝ていた。そばには自分の用意したリュックが置いてある。見まわすと家だ。懐かしい小学生を過ごした我が家。成功したのか?手を見ると小さい。そばの鏡を見ると映った姿は小学生の頃の自分だ。やった。時間がくれば与田君が呼び戻してくれる。研究者としての成功の喜びを感じていた。そばでは台所で亡き母が洗い物をしている。
武(久保田博士)(ああ、死んだ母がいる)
懐かしさでいっぱいだ。
武母親「たけちゃん、起きたらすぐにとうちゃんに返事するのよ。待ってるんだから。」
武「ええっ?何?何のことですか?」
武母親「なにってこの子は・・・。それに改まった言い方気色悪い。」
武は意識は久保田博士なんだ。すぐ気付いた。
武「い、いやっ。とうちゃんへの返事ってなんだっけ?ところで今日何日?」
母はやれやれとばかりに答えた。
武母親「あんたの好きな電車取りに行くんでしょうが。ぐずぐず言っていきたがらないでしょ?父ちゃんは表でそわそわしてるわよ。日付けって今日は5月5日よ。今日は休日ですし父ちゃん仕事の休みは今日しかとれないのよ?早く返事しなさい。」
武「ああ、5月5日か・・・」
その時はピンとこなかった。今日は運命の日だった。

一方美佐子も同じ日の自分の家に現れた。2人は近所。すぐにでも会える。この日は彼女の10歳の誕生日。美佐子の母は誕生日の支度を始めていた。武と違い美佐子はこの日のことを知っていた。武の父と同じ日に美佐子の母は交通事故で亡くなっている。車で誕生日プレゼント買いにいき、帰りに大型車と正面衝突。帰らぬ人となった。助手席からはプレゼントがつぶれて出てきた。渡せなかったプレゼント。美佐子には最悪な誕生日となった。

戻って武の家。武は表に出てみるとそわそわと亡き父が庭木をいじっている。懐かしさと死んでからの苦労を思い出したら涙があふれてきた。生きている間は割と裕福な家庭であった。しかし死んだ途端経営していた会社はつぶれ、家を失い、さまよう暮らしをした。苦学の末今の地位に昇りつめた。その父が今目の前にいる。でもこの世界では何も知らない子どもなんだ。
武「父ちゃん・・・。」
精一杯の笑顔で声をかける。武の気持など知る由もない。
武父(こいつ何で泣いてる?怖い夢でも見たのか?)
当たらずでも遠からず。
武父「例の話どうする?」
武「ああ、今日の撮影の話?」
あの時は気が乗らず、気楽に断った。ところがこの日持病の高血圧で血管が切れそのまま他界した。忙しい中遊びに連れてけないので子供に申し訳なく思っていた父。一方そんな自分にすねていた武。ようやく休みが取れたのだ。素直になれず最後の父の誘いを断り、永遠にかなうことはなかった。急にいろんなことを思い出してきた。悔みの津波が心に押し寄せた。
武父「どうした顔色が悪いぞ。」
武「い、いや。行こうよ、電車撮りに・・・」
武父「そうか、じゃっ準備しろよ。おれはできている。」
そこへ美佐子が家にやってきた。本来の時間軸か?その美佐子はどの美佐子だ?この世界の武のように挨拶に出た。
武「おう、美佐子。昨日の『8時だよ!全員集合!!』はどうだった?」
あの頃の決まった挨拶だ。美佐子はものすごく驚いた。
美佐子「うそ・・・そんな・・・」
美佐子はこの世界の武と思ってしまった。
武「なんだ。お前か。すまん。念のためだよ。実家はどうだった?」
子供の会話らしくない。
美佐子「それどころじゃないわよ。今日の日付は・・・」
武「ああわかってる。おれたちの悪夢の日だ。ひとまずおれはおやじの誘いに乗り悔いを晴らす。」
美佐子「でもあんた言ってたじゃないの。『過去を変えるな』と。」
武「ああ言った。でも不幸を目の前に何もしない気にはなれない。人間は弱い。結果どうなってもいい気がする。」
美佐子「なんてこと、このプロジェクトのルールブックが違反するの?」
武「でもおまえもこれから母が交通事故に遭うの外っておけるのか?人間なら無理な行動と思う。」
美佐子「そうね。」
武「おれは約束を果たしてくる。美佐子は自分の行動を考え、母と過ごすんだ。」
2人は別れ、それぞれに運命に立ち向かうことにした。

名鉄バスで東岡崎駅に向かう。バスも古く非冷房で三菱扶桑製。赤と白のツートンだ。時代はブルートレインブームでこの時期に鉄道マニアになったものも多い。この愛知県というとこには私鉄では名鉄が走っている。私鉄ものではかなりマニアも多い。この後いろいろ出てくるが他にも気動車特急、岐阜の市内線など鉄ちゃんではエンスーが多い。すべては時代とともに消えた。また、一方JRはこのころ国鉄と呼ばれていた。新幹線主体になり本線系は特急もなくこれというものはないけど、飯田線というローカル線は省電型と呼ばれる電車が走っていた。今でも沿線の風景の見事さで訪れるマニアも多い。その中古き良き日の名車が走っていた。飯田線と言えば旧型国電の代表路線にあげる人は多い。この2路線が交わる駅がある。豊橋駅だ。

東岡崎駅に着く。今と違ってかなり古めかしい。
武「うわっ、駅ビルだよ。なつかしー。」
武父「なに言ってんだ。おかしなやつ。」
子供になりきるのにも慣れてきた。でもついでてきてしまう。そうでした、今は日常でした。このころでも地下道を通りホームに上がる。改札は硬券の切符でハサミを入れてもらう。豊橋までの切符だ。見るものすべて子供のころの思い出の風景だ。でもいま目の前にある。今からの不安も一時的に忘れ、酔いそうになった。ホームに出ると信じられない風景だ。800系など過去の名車が当たり前に止まっている。戦時を走った釣りかけ電車だ。おれの趣味は鉄道の写真だった。でもあれから不幸のどん底でこの時期は全く空白になっていた。さっそくカメラをリュックから取り出す。父はその様子を見ていた。中から取り出したのはもちろん最新式のデジカメ。50年先の未来の写真機。当然父は驚く。
武父「おいっ、なんてカメラだ。ちいせえなー。だいたい俺はカメラ持ってきてるぞ。」
子供に買った覚えもないのでなぜ持ってるのか不思議に思った。
武「清志に借りたんだ。いいでしょ。」
適当に言っておいた。オートフォーカスもない時代。ごつく、機械の塊と比べると手のひらサイズのデジカメは明らかに異質な感じだ。液晶で見えるし、フィルムというものがない。父は異次元の機械を驚きで見ていた。
武父「清志君にきいといてくれよ。そんなのどこに売ってるんだ?」
当然売ってるわけない。
今日は時間がないので駅撮りでいこう。もうマニアモードだ。老いた俺が子供になっている。駅撮りとは風景より車両を優先したもの。駅なので移動も簡単だ。併結、切り離しが多いのでその風景を見る。旗で合図し作業を行う。
そこへ豊橋行きの列車がやってくる。
アナウンス「今度参ります電車は、豊橋方面豊橋行き高速です。停車駅は・・・」
古いアナウンスだが、今は標準。不思議な感覚。高速とは座席指定特急に対して料金不要の特急という当時の名鉄ならではの呼称。5200系だ。マニアでないとわからないけど、当然漫画なら絵で表現します。
武父「もうそろそろいいだろ?乗ろう。」
武「もう少し待って。あいつが来ない・・・」
武には幻の車両がいくつかある。その一つ3400系いもむしと呼ばれる流線型の車両だ。これも思いでとばかり少年を全開する。
武「あいつは東岡崎から美合の普通運用で・・・。」
次から次へと資料がリュックから出てくる。ダイヤグラムなんてものも出てくる。だが一枚ひらっとゴミのようなレシートが落ちた。さり気に拾う父。コンビニのレシートだが日付を見て驚いた。
武父(おいっこれはいったい・・・)
それもそのはずで、レシートの日付は2028年となっている。武を見た。
武父(そんなバカな。でもこれは・・・)
信じられない出来事が多いがひとまず現実を思った。
武父「こいついつからこんなにファンになった?」
武は体は少年、中身は60過ぎの年寄りだ。
いもむしはやはり来た。このあと普段急行「北アルプス」で使われてる気動車特急8000系の合間運用の特急が来たりした。唸るディーゼルエンジンと排ガスは電車にない感じがしていた。850系というもと名岐のナマズは時間の上であきらめた。豊橋に向かう。
やってきたのは7000系。いわゆるパノラマカーだ。こっちは特急。座敷指定席で先頭に乗りこむ。普通買えば真ん中の席になる。いって先頭の席を買う。いつの間にかやたら世間ずれしてる子供に父は目を見張る。
7000系は日本で初めて展望台を設けた車両で、2階に運転席を設け、1階は全面ガラス張りの車両だ。すれ違う列車やら興奮気味にみている少年久保田博士。子供に戻っていた。

一方美佐子の実家ではいよいよプレゼントを買いに母が行こうとしていた。現実では全く知らず事故の知らせで初めて買い物に行ったことを知る。しかし、今回はすべてがわかっている。時間になったとき美佐子の方から言った。
美佐子「かーさん、買い物ついていくよ。」
いきなりプレゼントのリカちゃん人形渡そうと思っていたのにちょっとがっかりだ。まさか自分が事故にあうので娘が心配してるとは思っていない。
美佐子母「みさちゃん、今日はプールの日でしょ?いかなきゃ。」
プールに通っている間に事故は起きた。プールはスイミングスクールだ。
美佐子「今日は体調が悪いの。休む。」
美佐子母「しょうがない子ね。」
いつも真面目にいく娘が珍しいと思った。
美佐子「いまから買い物でしょ。一緒に行く。」
美佐子母「まあいいけど。でも体調悪いんでしょ?」
結局買い物についていった。もし事故れば美佐子も犠牲となる。このパラドックスはないはずだ。
美佐子「今日は他のお出かけやめて。」
美佐子母「ちょっとあんたへんよ。なにかあるの?」
さすがに本当のこと言った方がいい。
美佐子「今日交通事故でかーさん死んじゃうの。だから・・・。」
美佐子母は驚いた。でも予言など子供のたわ言と思ったのか
美佐子母「そうね、気をつけるわ。」
プレゼントを百貨店で買った。

昼を回った。一方武の方だ。豊橋駅についていた。駅は名鉄が飯田線と東海道本線の間にホームがある。降りると懐かしい平屋の駅舎の豊橋駅だ。今日の予定では豊川まで行き引き返すというものだ。タブレット交換のある新城の先も行きたいが小学生のこの体、やめておこう。0番線の飯田線には懐かしい車両が止まっている。クリームに紺のツートンの辰野行きのクモニ83の荷客混合列車や、クモハ53などの列車だ。今と違い行き先表示板を「豊橋」から「本長篠」に交換している。少年武は飛び乗った。久保田博士の時代では鉄道資料館(佐久間レールパークなど)に展示されてるだけだ。これが現役で走っている。荷物を積んだり宅配が整備されてる現在では考えられない風景もあった。車両に乗り深呼吸する。ニス塗りの木造の内装は懐かしいにおいがする。降りると父が弁当を買ってきていた。ここで昼にしようか。駅のベンチに座った。初夏の日差しは眩しく父は汗をかいている。弁当を広げて2人で食べたが、武はいようとしていたことがあった。あと1時間ぐらいで父は倒れる。
武「父ちゃん、今日はありがとう。」
珍しい息子の言葉に黙って父親は弁当を食べる。
武「父ちゃんに食後に飲んでもらいたい薬があるんだ。」
と言って取り出した薬は自分のために持ってきた血圧降下剤だ。それを一目見てすぐ目をそらした。
武父「ふだんかまってやれず、悪いと思ってる。それより、おまえなんか言いたいことがあるんだろ?」
武「えっ?どうして。」
武父「ほんとうに武なのか?お前はなにかおかしい。」
もうばれている。そう思い本当のこと言うことにした。
武「僕は未来の武です。もう60歳超えてます。」
父は無言だ。
武父「俺の息子はどうなった。出世したか。」
武「父ちゃん、最高な人生になったよ。タイムマシーンを開発した。だからここにこれて父ちゃんに再会できた。それに父ちゃんより長生きできた。」
倒れる父は目の前だ。
武「後1時間で父ちゃんは倒れ、家は崩壊する。だから、これを飲んで・・・」
武父「俺に運命があるなら従おう。でも出世できたか。思い残すことはない。でもこれは飲んでおこう。運命というのは人間ではどうにもならない。父の言葉として発明者の息子にいっておこう」
涙ながらすがる息子を抱きかかえる父だった。
武父「でもな、武。どんな運命があろうが今を精いっぱい生きる気持ちは忘れるな。」
そこに目的の電車が入ってきた。80系だ。オレンジと緑のツートンの車両だ。
武父「今は最後の思い出をつくるんだ。乗ろう。」
発車した。今と違いこんな古びた車両などみんな見向きもしない。釣りかけ駆動の重いモーター音が体に響く。武の目には大粒の涙があふれている。いつしかカメラのシャッターも忘れた。
武(古いものがいなくなる。運命としても・・・辛すぎる。)
そして豊川駅に着いた。旅の終わりだ。駅に立つ。いつもの日常がある。そこにやってきた列車があった。クモハ52系だ。名車として活躍し、引退後はこの飯田線で余生を送っていた。でもこの年の11月に廃車になるはずだ。引退間近の車両。父が近寄る。
武父「武よ、よく見ておけ。この一瞬は2度と来ない風景だ。すべて時代の波に押し流されても、おまえの心には生きている。おれもそうだ。」
老兵は短い汽笛を鳴らせ発車した。

その夜父は発作をおこし帰らぬ人となった。だが、実際と違い、約束の思い出を果たしわずか3時間生き延びた。病院でむせぶ武に声をかける者がいた。美佐子だ。
久保田博士「だめだったよ。親父はやはり死んでしまった。」
美佐子も泣いていたようだ。まさか・・・
久保田博士「美佐子のおかあさんも・・・。」
黙ってうなづく。目から次々涙が出てくる。黙って2人は抱き合った。
美佐子「車で買い物行きかえって10歳のプレゼント渡された。でも、でもね・・」
泣いて言葉に詰まる。
美佐子「ほんのちょっと、ほんのちょっと目を離したすきに・・・」
胸で泣く美佐子。呆然と宙をみる。結局ほんの少し家から散歩に出たところを車にはねられたのだ。こちらも4時間生き延びた。
久保田博士「美佐子、戻ろう。そろそろ与田君が現実に戻すころだ。お互い思いを遂げられた。ほんの少しだけ長生きもできたんだ。」
思い出の品物は現実に持って帰れるだろう。ささやかに辛い思い出を変えることができた。

過去の悔みは人を責め続けるかもしれない。もし「あのときああしたら・・・」ができれば救われる魂があるかもしれない。このラビットホールは実は心のタイムマシーンかもしれない。

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