マンガレビュー9月分

「花園メリーゴーランド」 1 柏木ハルコ 小学館



この人の本を買ったのは初めてです。
以前から読んではいましたが、「もう一息」という感じがしたからです。
いずれの話もやや淫靡な「異常性癖もの」ばかりだったのですが、
終わりがいつも尻窄み、あと少しで突き抜けられるはず、と期待していました。
このお話は、都会の少年が山深い里のインモラルな風習に巻き込まれるというもので、
実にこの人のモサッとした画風にあった、いいネタを考えついたようです。
短編で終わると思いますが、期待を込めて“買い”でしょう。


「素敵なラブリーボーイ」 伊藤伸平 少年画報社



本当は、熱いマンガ魂を持っているにもかかわらず、
伊藤伸平、あさりよしとお、よしもとよしとも等は、どこかスカしたような醒めた作風が気になります。
絵にしても、虚飾を廃した結果“無印良品”な特徴のないものになっています。
照れ屋さんなんですね。
これは氏には珍しく、こっぱずかしい学園ラブコメものですが、
予想通りの素直な展開とはなりません。
どんなSFのアイデアをひねり出すより、苦労されたことでしょう。
サービスはグッと押さえ気味ですが、
これはこれで、さっぱりとしていながらコクがある小品だと思います。


「静かなるドン」 55 新田たつお 実業之日本社



いったいいつまで続くのでしょう、ちょっと心配になってきました。
話はどんどん大きくなって行きます。
「劇画村塾」仲間からは「パクリ屋」と揶揄される事もあるようですが、
このお話は本当に面白い、奇跡のような作品だと思います。
それゆえ、マンサン側も本人も止めるに止められず、〆所が判らなくなっているんじゃないでしょうか。
もう5回はクライマックスを越えたような気がします。


「強殖装甲ガイバー」 18 高屋良樹 角川書店



最初の連載から数えて、もう20年は経ったでしょうか。
幾たびもの休刊、誌面変更、ご本人のスランプを乗り越えて、ようやく18巻までたどり着きました。
この間に何度、似たようなアイデアのマンガが始まり、完結したことでしょう。
2回アニメ化もされました。
当時珍しいエロ畑からの出身で、遅筆で有名な氏ですが、
クリーチャーデザインには、並々ならぬこだわりが感じられます。
バトルインフレーションは激しく、たためるのか心配になるほど壮大な展開になってきました。
でもこれほんの1〜2年のお話なんですよね。
さすがにここに来て、クライマックスが見えてきたようです。


「KUNIE-パンゲアの娘」 1 ゆうきまさみ 小学館



ゆうきまさみ自体、どことなくとらえどころのない印象があります。
このお話も、表紙からのリゾートな雰囲気を受けますが、どうやらSFっぽい様です。
「ネオランガ」みたくなるのかな、解んないけど。
絵は今風にやや洗練されましたが、やはりサービスは少な目。
読者の期待をはぐらかすのが、実に上手い人です。
考えてみれば、一作毎に全く違うテーマで描かれていますが、
いずれも“ゆうきまさみワールド”で統一感があるのが不思議です。


「犬神」 12 外園昌也 講談社



「とり みき」ばりのギャグマンガから始まり、「ますむらひろし」的ファンタジー世界、
ゲームコミック等、紆余曲折を経て「Drモードリット」あたりからついにたどり着いた、作者独自の世界です。
とは言え、出だしは「寄生獣」の様であり、11巻からの展開は「エヴァンゲリオン」に酷似しています。
スタートはわりと早めなので、影響は受けているでしょうが、
別にパクったわけではないと思います。
ホラー的“気持ち悪さ”は最高で、これは絵の下手さに由来します。
けなしているわけではありません。
この絵であるがゆえに、描ける世界を見つけられたということでしょう。


「ちょっと危ない世界旅」 神坂智子 潮出版



これはいわゆる「旅のドキュメンタリー」です。
驚くのは、その行き先・・・・紛争国ばかりを巡られています。
危ないところがお好きなわけではなく、お好みの“茫漠”としたところが、たまたま危ない所であったということです。
旅の素人には、とてもまねのできない行動力、
不測の事態に耐える寛容さ、実にナチュラルな観察眼、文化に対する理解、
このような資質が、すばらしいファンタジーを生み出す原動力なのでしょう。
ただ、「いかなる創作物よりも現実の方が面白い」という事実を、
再確認させられました。


「串焼きP」 2 SABE メディアファクトリー



言わずと知れた「南Q太」の元ダンナ
彼女がいち早くトレンドリーダーになってしまわれたので、
男的にはつらいものがあるかも知れません。(田嶋陽子センセイに怒られる?)
エロ畑出身ですが、ジャンル分けできないと言うか、
独自の世界をお持ちのようで、このお話もどう進むのか、何が言いたいのか
全く解りません
ただ一つ言えるのは、“ブルマーが好き!”くらいですね。
画面に漂う、言いようのない緊張感が心地よいです。
はたして「改造ペンギン海ガラス」は、動物界の覇者足り得るのか!


「EDEN」 6 遠藤宏輝



モンタージュ法が激しく、物語が入り組んでいるので、まとめて読まないと
ストーリーが理解できません。
絵も舞台設定も、とても丁寧に描かれていますが、
連載中のアフタヌーンのハシラには、いつも厭世的かつ世間を敵に回す様な
カゲキなアオリでいっぱいです。
想像ですが、ご本人は「無口で控えめないい人」ではないでしょうか。
でなきゃあマンガ家になろうなんて思いませんよね。
近未来の政治劇になるのかと思いきや、今は暗黒街のパワーゲームに終始しています。
きっと描きたいことでいっぱいなのでしょう。この話まだまだ続きそうです。
こんな話を支えるのは“アフタヌーン”以外にはありえません。


「NANASE」 1 画 山崎さやか 作 筒井康隆



この人も、出だしは「柏木ハルコ」同様、“死ぬほど面白い”のですが、
上手くたためたためしがありません。
頑張りすぎて、”子供を焼いて食っちゃう”話を描いて、発禁回収騒ぎになったこともありました。
今回は原作付です。
筒井康隆の中でも、もっとも人気の高い「七瀬シリーズ」の2作目
「七瀬ふたたび」より物語は始まります。
文学として“テレパス”の読みとる心理描写を、文章に出来た筒井に感心しましたが、
それを絵にするのはもっと難しいと思っていました。
雰囲気が実に合っています
七瀬の美しさと異端者の孤独が、作者の苦悩とも混じり合い、
今までで一番、原作の意図を表現できているように思えます。