マンガレビュー 8月分

「栞と紙魚子と夜の魚」 諸星大二郎 朝日ソノラマ



栞と紙魚子シリーズ第4弾、忘れた頃に出てきます。
主人公の二人は、メガネっ子と美少女(のつもりらしい)ですが、なんの萌えもありません。
どうしたらこんなに下手な絵を維持できるのか不思議、新刊なのか再版なのか見分けがつかないことが難点。
家の陰から現れる「夜の魚」のイメージは、この絵でないと表現できないので、
上手くなってもらってはりますが・・・、そんな心配は無用でしょう。
多くの諸星(もろほしと発音します)作品とは異なり、ギャグを一生懸命入れていますが、
これで笑う人はいるのでしょうか。
巻末には作中に出てきた、架空の本の解説も付いています。とっても律儀。
「古本地獄屋敷」では、まさに古書マニアの陥る無間地獄そのものを描写しています。
唐沢俊一などは「オレのことだ!」と叫ぶでしょう。


「アトミック カフェ」 長谷川哲也 ノアール出版



二等身キャラによるSF短編集です。
表紙にはかわいい女の子が描かれていますが、これは免罪符のようなもの
むさい男のロマンあふれるお伽噺
丸っこい絵は、ハードなオチをやわらげるためのカモフラージュです。
源流は吾妻ひでお、他にも青山パセリ、岡崎二郎、すらそうじ、豊島ゆうさく、あさりよしとお等
多くの作家がこのジャンルに挑みましたが、いかんせん、
銭になりません
苦労してオリジナルなアイデアをひねり出し、編集者を説得し・・・、
玄人に高い評価を得られますが、報われることは少ないようです。
個人的には一番好きなジャンルです。


「凌駕」 1 渋沢さつき 竹書房



いまや一大ジャンルとして確立されたマージャンマンガです。
同一ジャンルの中で、新しいものを立ち上げるには、何かしらのアイデアが要求されます。
この主人公は、赤ウーを武器に戦います。
要は、この無理な設定を、いかに説得力を持ってストーリーに生かせるかにかかっていますが、
おおむね成功しているようです。
この人の場合、むしろそのシャープでクリーンな絵の方に惹かれます。
長い間、女性か男性か解らなかったのですが、
「麗人」にも、耽美系もーほーマンガを描くような、れっきとした女性でした。
ストーリーは、ほとんど原案の男性が作っているものと推測します。
「おJoeちゃん」の様な作品も、もう一度読んでみたいものです。


「海人丸」 笠太郎 実業之日本社



ダサダサの演歌調マンガですが、その実力はお墨付き、文句なしに面白いです。
特徴としては、一ページに三ヶ所はある鼻息でしょうか。
「鬼政」でさんざん描いたので、料理はめちゃくちゃ美味そう!
刺身を描かせたら日本一!
話は、しょぼくれサラリーマンが、父の幻影を追い求め、
立派な海人(うみんど)になるというもの。
素直に感動しましょう。


「泥棒猫」 1 大石まさる 少年画報社



とても魅力的な絵だと思います。
前作、「みずいろ」とは絵柄を大きく変え、ギャグ方向にシフトしています。
妙な色気が漂っていますが、「夢ノ二」というPNで成年誌にも描いていました。
ポイントは頬の斜線ですね。ここに斜線入れると普通にしていても、紅潮したお色気顔になります。
話が唐突で、これと言ったメインストーリーがないところに、
もしかして女性では・・・・という疑惑を持ったので検索しましたが、
これと言った証拠は見つけていません。
後半のネズミのくのの話の方が、断然面白いと思います。


「筆神」 田村吉康 集英社



一冊の本の中で、これほどの進化を見られるのも珍しいと思います。
デビュー作は安直なジュヴナイル以上の物ではありませんが、
一作毎に、絵、アイデア、展開共に上手くなっています。
この進化を見抜く目こそ、集英社のあなどれないところだと言えます。
今後の期待のでしょう。
アート展に入作した同名の方がいますが、ご本人でしょうか
年齢自画像共に似ています。
KFS大賞


「偶然が残すもの 記憶鮮明U」 日渡早紀



いまもみずみずしい印象のある日渡さんですが、巻末の古いマンガを読むと
いかにベテランであるかが解ります。むしろ絵的には若返っている様。
「ぼくたま」のサイドストーリーというより、こちらの方が先のシリーズです。
同時収録の「BIRTH」も、サイドストーリーですが、全く違った切り口を見せてくれます。
男と女の本質に踏み込んだ哀しいお話。
大人の視点と若い感性、
両方を維持するのは大変な努力がいることでしょう。


「食わせモン!」 1 寺沢大介 講談社



「ミスター味っ子」以降、食べ物マンガオンリーの道を歩んでおられます。
問題は、肝心の料理があんまりおいしそうに見えないところ。
アニメ版のようなトリッキーな表現は影を潜めましたが、人の感情表現のくどさは日本一でしょう。
名作「将太の寿司」の後ゆえ、思いっきりイヤなヤツを主人公に持ってきました。
しかもコイツは素人です。手先が器用なだけのスリ小僧と組んで、
どう説得力を持った展開に持ち込むのでしょうか。
作者自身がルーチンワークに陥ることを恐れ、自身に課題を投げかけている
としか思えません。


「クロノアイズ」 4 長谷川裕一 講談社



それほどの古い人ではありませんが、線は二世代前の様です。
サービス精神は旺盛で、必ず一巻に3ヶ所ほどは、「あっ」と驚くようなアイデアが盛り込まれています。
ノルマのようにはだかも出しますしね。(「童羅」という成年コミックもあります)
書きなぐりのようなガサツな絵もあって、いいかげんに話を作っているようにも見えますが、
インタビュー記事などを読むと、わりと細かく設定はされているようです。
きっと型でしょう。
今回も脇役だと思っていた「クレオ」が重要なキーパースンだったりして、
どこまで思いつきか設定どおりなのか、判断に苦しみます。
「マップス」の時もそうでしたが、どんどん話が膨らんで行くため、
どうたたむのか、どこまで続くのか、全く見当が付きません
最近手に入れた「八月の閃光フィルム」というアマチュア作品集に、同氏と同名の方を見つけました。
本人かどうか検索中です。


「ジャングルはいつもハレのちグー」 8 金田一連十郎 エニックス 



TVアニメは当たりです。
実に上手く原作のニュアンスを再現しています。(ウェダの顔はちょっと難あり)
さて、その原作ですが、これはもういいかげんとしか言いようがありません。
連十郎と名乗りながら、まだうら若き女性である作者は、設定も展開もあったもんじゃなく、
行き当たりばったりで描いています。
いくらギャグとは言え、男にはここまでいいかげんには描けません
グーがいったい何者であるかという、基本的な疑問さえ無視されています。
ベテラン芸人曰く「天然には勝てん!」というヤツです。
それゆえ、この感性は何者にも代え難いのです。


「スイート・デリシャス」 1 青木光恵 祥伝社



「小梅ちゃんがゆく」あたりでは、ちまっとした四コマギャグマンガの人でした。、
「はたらくお嬢ちゃん」で等身が伸び、ストーリー方向へ指向してきました。
それでも生粋の大阪人である彼女は、笑いは忘れていません。
これはレディコミの掲載ですが、あまりにもあけすけなエッチ描写は、大人の女というより
おっさん”のそれです。
女体を描く視線は、明らかに男のモノで、昔、「最近の子は小梅ちゃんでくのもいる」というのが
話題になったこともありましたが、いまの彼女の絵ならそれも可能でしょう。
別にレズってわけではないみたいですが、小林ひよこ、高梁留美子等に、同じ様な視点が感じられます。
やはり健全な女性は、「やおい」に趨るのが正しい道というもんでしょう。
ラストページのオチには唖然!


「ダンデライオン」 01 落合尚之 小学館



ありがちな、サイバー探偵ものかと思いましたが、とんでもない、サイコで奥深いSFミステリーです。
本誌ではもう連載が終了していますが、2巻を読んでから書くべきだったかも知れません。
とても2巻で終わるような話とは思えないので、「打ち切り?」
という疑問が湧いてきます。
不勉強なことに、私はこれがこの作者初見です。
評判の高かった前作「黒い羊は迷わない」を、是非買わなければという気にさせました。
キャラクターの設定が解りやすく、魅力的です。
「ダンデライオン(たんぽぽ)」という、人の心に寄生するサイバーウィルスとは、いったい何者なのか。


「メイド・ウーマン」 かるま龍狼 二見書房



これは復刊ですが、昔からほんとに絵の上手い人です。
所々手直しが入っています、やはり今の絵の方が格段とレベルアップしているようです。
きっと、一般誌の方から引き合いが来ているとは思いますが、
はたしてエロが押さえきれるでしょうか。
性器や挿入シーンをモロに描いてありますが、いつから
よくなったんでしょうか。いくらかわいい絵とはいいえ、
近日中の手入れを予感させます。


「獣星紀 ギルステイン」 1 作 酒井直行 画 田巻久雄 小学館



メディアミックスです。元々は映画が先行企画だったので、脚本はしっかりしています。
15歳の少年少女を襲う「カドケウスウィルス」による「変身症」。氷に閉じこめられたの少女。
まさに物語はこれからというところです。
作画の田巻氏は、SAC宇宙作家クラブにも所属なさっている(そうそうたるメンバー)ベテランで、
コロコロに「アストライダーヒューゴ」を描いたり、
ウルトラマンやスターウォーズのマンガ化などされていますが、
雑誌が廃刊したり打ち切られたりと、不遇の時を過ごされているようです。
上手い方だけに、これで一発当てられることをお祈りいたします。