マンガレビュー 7月分


「恋の門」 3 羽生生純 エンターブレイン



「芝生に入らないで下さい」という立て札を、芝生にはいる人は読みません。
本当にこの本を読むべき人達は、この本の存在すら知らないでしょう。
業界内にいながら、自身を否定する行為は、「地球少女アルジュナ」のごとく、
まさにイバラの道を歩んでいます。
ヲタクによる、ヲタクのための、ヲタク警告マンガ。
第一巻の「ウテナ」のアンシーのコスプレをしたストーカーでぶに続き、
恋乃の両親が「イデオン」のコスプレで出てきたとき
またひとつ、幻想をうち砕かれた気がします。
はたして、完結まで「ビーム」は持ちこたえるか、それだけが心配。
ちなみに名前は「はにゅにゅうじゅん」と読みます。

「AQUA」 1 天野こずえ エニックス



300年後の未来、火星はテラフォーミングされ、9割以上が海となり「アクア」と呼ばれています。
水の都をモデルに作られた「ネオベネツィア」で、
観光用ゴンドラ乗りの見習いを始める主人公。
でもそんなのはどうでもいいです。
純正「いやし系」マンガである本作は、
ただそのクリーンでひんやりした世界に、浸りきればいいのです。
男には決して描けないであろうパラダイスを、垣間見せてくれます。


「龍 RON」 28 村上もとか 小学館



「見てきたようなウソ」といいますが、
この作家は我々と同世代人でありながら、昭和初期のこのお話を
あまりにリアルに描いています。
他の作品でもそうですが、資料と取材だけで紡ぎ上げる手腕は、
読ませていただきます」という以外に口を挟む余地はありません。
今回は、「龍」はほとんど出てこず、「てい」の映画監督話になっています。
この場面転換も見事と言うほかありません。
一見、本筋とは無関係に見える寄り道をくり返しながら、
ひとつの物語に収れんして行く、
壮大な絵物語の完成を、楽しみに待ちたいと思います


「あけがたルージュ」 2 近藤ようこ 小学館



漫画界の純文学。
この人の作品には、いつも経血の匂いがただようようです。
枯れた老人の話も好きですが、このように母と女の間で揺れる女性の描写こそ
この人のもっとも得意なストライクゾーンと言えます。
中島みゆきに「ルージュ」という曲がありますが、まったく同じ感性を見いだせます。
二人とも水商売の経験はないでしょうが、きっと業界の女性は
解ってくれてる」と言うでしょう。
ずいぶん前「噂の真相」に、傭兵部隊で働く日本人にインタビューした記事があり、
「昔つき合ってた女に捨てられてさ、どうでもよくなってここに来たわけさ、
確か漫画家になるって言ってたけど・・・近藤ようこって言うんだ」
これがホントなら、きっとつらい恋を経てきたんですね。


「砲神エグザクソン」 4 園田健一 講談社



おっぱいの大きな女の子と、巨大ロボット、巨砲、
男の子の欲望を、これだけ正直に前面に押し出された作品を見せられると
少しでも醒めたとたん気恥ずかしいものです。
おそらく園田健一がもっともやりたかったモノに違いありませんが、
世間では前作「ガン スミス キャッツ」の方がウケがいいようです。
それは、こう見えてハードなSF設定と、お互いに先読み先読みをくり返す高度な戦術戦が、
慣れない人には難しすぎるからでしょう。
このまま編集や読者の意見に耳をかさず
どんどん深みまではまってほしいものです。


「ニア アンダーセブン」 2 安倍吉俊+gk 角川書店



アンテナなし宇宙人、潰れかけの風呂屋、
食うや食わずの浪人生(母子家庭、弟は病気)どん詰まりの状況で、
この開放感はどうでしょう(屋根穴あいてるし)これもまた癒し系です。
WOWOWのアニメから入ったのですが、まあ何か起こりそうで起こらない
?????なアニメでした。
原作読んでも同じ事、いったい何がやりたいのか解らない。
でも、そこがいいんですよね。
鉛筆の線を残した作風は、「無限の住人」にちょっと似ています。
ワク線もフリーハンドです。これ楽そうに見えて、結構めんどくさいと思います。


「ジパング」 4 かわぐちかいじ 講談社



少し前に流行った架空戦記ものとは、ひと味違います。
それはこの作家が「武力と平和」に関して、
実にニュートラルで、必要以上の思い入れや、おかしな思想もなく、
現実的な大人の視線を持ち得ていることだと思います。
それゆえ、戦記マニアや兵器マニアにとっては、何十ヶ所ものツッコミ所を見いだす事になるのでしょうが
(例えば大和の主砲弾をインターセプトできるかとか)
それはこの物語の本質とは無関係のことです。
はからずも、正統なSF作品として成立していくものと確信します。
ご本人はそんなこと気にはしないでしょうが。


「パラノイア ストリート」 駕籠真太郎 メディアファクトリー



突然創作意欲に目覚め、あらゆる所で精力的に作品を発表されているようです。
理系の発想力から生まれる、「唐沢兄弟」的マンガの
リアル版といった趣の作品は、よりやっかいなお仕事であろうと想像されます。
探偵コンビの訪れる、不条理な街々のアイデアを考えるだけでも大変なのに、
第6話「渡/戦」の、他の街を吸収していく渡町の描写は
腱鞘炎の危機を予感させます。
本来「ガロ」的な作家が、世間のニーズとマッチし、
なおかつ本人も商売っ気を出してフル回転、というところでしょうか。


「魔人 DEVIL」 1 大暮維人 講談社



やっぱり今の日本の漫画界では、絵の上手さは一番であると再確認。
しかし今回は少年誌なので、エッチ度はひかえ気味です。
やや苦しそう。
まあ吸血鬼のお話ですが、一応不死ウィルスに感染という説明は付いています。
どうでもいいですよね
相変わらず捨てゴマは描かないので、話は難解ですが、
物語を掘り下げようという意欲は感じられます。


「コミック,H」 08月号 ロッキング・オン



こういう雑誌を私は勝手に「オシャレ系」と呼んでいます。
ただでさえ最近は売れないマンガ業界にあって、ここまでターゲットを絞ると
採算が取れれば奇跡に近いと思います。
こういうのを好む人達は、リピーターでもヘビーユーザーでもないので、
単なる編集者の自己満足にすぎないでしょう。
ただし、文化に対する貢献度は強力なものがあり、
個人的には、何度でもスポンサーをだまくらかして、出していただきたいと考えます。
こういう場でないと発表できない作家も、たくさん居ますから。


「九龍 クーロン」 Vol1 河出書房



最初は「コミックCUE」が改名したのかと思いました。九だし
上の本もこれも作家がかぶりますね。
皆さんのびのびと描かれているようで、違った一面が見られます。
でも売れないでしょう。
「ガロ」だけで、いっぱいいっぱいです、この市場は。
編集者になったからには、一度は出してみたい
業界同人誌といったところでしょうか。