マンガレビュー12月

「この花はわたしです。」 1 画 国樹由香 作 喜国雅彦 小学館



国木由香と言えば純情可憐な生粋の少女マンガ家
その夫、喜国雅彦と言えば変態メタル野郎。
あえてこの絵で下ネタにはしるというのは、一種の羞恥プレイか・・・・。
夫婦なんですから好きにすればいいのですが、クリエーターという仕事は
おのれの性癖を晒すなんと業の深い職業だと痛感。
花言葉にちなんだ女の子の短編集ですが、何がなんでもエッチネタに持って行く喜国の力技には感服。
サビの難しそうな決めポーズには、夫のペンが強力にサポートしているものと推測します。


「少女、ギターを弾く」 1 朔ユキ蔵 ワニマガジン社



江川達也の呪縛から逃れ、新しい地平を目指し始めたようです。
でもその先には真崎守が居たのでした。(知らない人はマンガ夜話で勉強しましょう)
少女、ギター、は単なるキーワードに過ぎず、大きな意味はありません。
エロなのですが、あまり純文学方向に振られるとヌケません。
商業的には辛いか。
私は好きですけど。
すごい引きで「つづく」になっています。たためるかどうかは大いに不安。
「酩酊文学少女」の文字がを飛ぶ表現、
このあたりに作者の非凡さが漂っていると思います。


「新暗行御史」 2 画 梁慶一 作 尹仁完



「アメンオサ」と読みます。
名前で解るとおり韓国の作家コンビで、新世代の旗手です。
台湾韓国の漫画界は、古くは池上遼一、最近では原哲夫の影響が大でしたが、
ようやく日本のトレンドに合った、劇画臭さの抜けた作品も出てくるようになりました。
絵の誠実さは士貴智志を凌ぐほど、柔らかな線は伸びやかです。
ただストーリーは走りすぎ、集英社系のインフレーションとも違う、文化の差を感じます。
これをキムチ臭さというのでしょうか(ご本人は辛いキムチ嫌いだそう)、
韓国ではよく知られた勧善懲悪ものらしいですが、大きくアレンジを加えています。
日本人の私としては、登場人物の心理描写に「えっ!」と戸惑うことがよくあります。
しかし買って損はなし。
従者「山道」のコスチュームはやりすぎ、無意味に露出しているのは日本側の要請?


「りんちゃんクッキーのひみつ」 大石まさる 少年画報社  「流れ星はるか+」 夢ノ二 大都社



「夢ノ二」(ゆめのじ)はH系のペンネーム、人気の高まりに合わせて、
未収録を含め再版されたものです。
いろいろ訊ねてみたのですが、いまだにこの人の性別が解りません。
私は女性だと推測しています。
理由は、起承転結の“”を省略する少女マンガ特有の文法、
ヘタすると“”まで省いてあるので、男には読みにくいのです。
あと、おいしいコマでいきなり核心を突いて来るところ、男なら小出しにしてじらすはず。
このあたりに「こばやしひよこ」と共通した、手加減のないエロ描写を見いだせます。
次いで出た「りんちゃんクッキーのひみつ」、このリリカルなお話が男に描けるでしょうか。
しかし「神戸在住」の大村紺が、むつけきおっさんって例もあるしなぁー・・・・。


「END ZONE」 1 えんどコイチ 集英社



えんどコイチといえば「死神くん」、もう20年近く前の作品ですが、
氏が一貫して追求するのはブラックな笑い。
その点では藤子不二雄Aと共通しているようですけど、この人はホントにいい人なのでしょう、
どんな悲惨なオチをつけても、陰惨さはありません。
そこが美点とも言えますし、ぬるさであるとも言えます。
アイデアは、短編で使い切るにはもったいないほど豊富です。
見た目以上に毎回の連載は大変な事でしょう。
この面白さが、一部マニアに玄人ウケしかしないことが残念です。


「クロノスヘイズ」 1 高野真之 メディアワークス



前後の説明もなく、唐突に話は始まります。
近未来、巨大な学園に主人公が入学するところから、いきなりロボットの暴走。
パートナーとして与えられる人型の人工生命ジャケット(実はマイクロマシンの集合体)
どうやらこの学校は戦士の養成所みたいです。でも何と戦うかは不明
SFなんですが、ノリは完全な学園ものです。
シャープで好きな絵柄なのですが、男顔女顔の描き分けがなく、
いや、それ以前にキャラクターの見分けがつきにくい。こんな疑問を持つこと自体
私が老けた証拠なのか・・・・皆さん素直に読めるのかな?
これ以前は「ブギーポップデュアル」しか知りませんが(未読)、同人の方で活躍されているようです。
最近こういう野放しマンガ家が増えてるように思うんですが・・・嫌いじゃないですけど。


「身想心理」 陽気婢 講談社



元々美少女系からでデビューの(最近多いですね)、その方面ではベテラン作家です。
これはいろんな雑誌に描いたものを集めたアンソロジー本で、変遷がうかがえます。
最近は等身が伸び、とてもさわやかな画風となって、丸急上昇の予感。
スレンダーなボディラインには、なぜか独特の色気が漂います。
特徴はなんと言っても全員たれ目のキャラ、頬の斜線、すかした可愛さ。
ホラーからファンタジー、ラブストーリーまで、これから多くの雑誌で見かけることでしょう。


「吼えろペン」 島本和彦 小学館



「燃えろペン」の続編といえば言えます。
作家本人を主人公にした、マンガ家の姿勢を正す説教マンガですが、おそらくほとんど参考になりません。
この人ほど「」が降りるときと降りないときの差が激しい人はいません。
逆境ナイン」は完璧な傑作、「無謀キャプテン」はどうにもならん駄作。
単行本を初見で買うときは、賭けのようなものです。
で、これは傑作です。問題はこの勢いが何巻まで続くかだけです。


「マリィの奏でる音楽」 2 古屋兎丸 幻冬社



上巻から一年、みごとな完結です。
積み上げられたイメージの奔流に、パラダイスをめざすファンタジーだと勘違いしていました。
これは世界の未来を探るSFだったのです。
パラダイスの安寧と絶望、人の欲望と愛の葛藤
この絵空事の世界は、今の世界の投影図なのです。
現実はとても残酷です。
ラスト、三重にしかけられたどんでん返しには驚かされました。
この作家のもっとも得意とするところが、だまし絵だということを忘れていました。