マンガレビュー10月

「ずっと先の話」 望月峯太郎 講談社



この人が「ギャグマンガ家」であったことをすっかり忘れておりました。
「バタアシ金魚」ですから。
88年から最近までの短編を集めた本ですが、驚くべきは「絵」にほとんど変化がいことです。
進歩の無い下手な絵は、恐怖を描く上では重要な武器なのです。
「ドラゴンヘッド」で一躍有名になってしまい、"怪奇マンガ家”という風情でした。
この表紙も、「伊藤潤二」(うずまき)っぽいですが、別にスタンスを変えられたわけではなく、
この人の中には、笑いも恐怖も同一平面上に存在するということです。
これは、「梅図かずお」や、「いがらしみきお」sinkの中にも存在する真理だと思います。
特徴的なのは、次にこうくるだろう、というコマが描かれていなかったり、思いもよらぬコマが描かれていることです。
おそらくは”天然”、このリズム感は、計算で作れるものでは無いと考えます。

「孤島の姫君」 今市子 朝日ソノラマ



はっきり言って、「今市子」初見です。強く人から奨められたので、とりあえず短編集から入ってみました。
とにかくカラーが綺麗です。特にセピアの使い方。
セピアとだけで、実に華麗な絵に仕上がっています。
その分、ペンのベーシックな素っ気なさが残念ですが、淡々とした語り口には似合っています。
設定、視点、切り口がひとひねりしてあるので、読み始めが難解です。
個人的には、「ライトな山岸涼子」という感じがしました。(ファンに怒られるか?)
基本的にほとんどファンタジーな方ですが、巻末のペットの文鳥レポートマンガで、
文鳥がどんどん増えていくあたりの方が、かったです。
「百鬼夜行抄」も、読まねばなりますまい。


「タイム・トルーパー」 小林源文 世界文化社



この本は、10年ほど以前に描かれたもので、新装再版本で1月に出たものですが、やっと今頃手に入れました。
珍しい左開きで、元は「コミックノイズィ」というアメリカ進出用戦略雑誌でしたが、
健闘むなしく12号で休刊となりました。
その辺の恨みつらみは、あとがきにも書いておられます。
(ここには、「ガンスミスキャッツ」の原型「ライディング・ビーン」や、「トニーたけざき」なんかも描いてました)
小林原文といえば、まさに戦争マンガの第一人者にして最上のプロパー。
これは釣りマンガにおける「矢口高雄」、SM界における「団鬼六」の様なポジションですね。
100年後の未来から、50年前の第二次大戦中のドイツに5人の歩兵がタイムスリップしてきます。
「ジパング」のイージス艦どころの騒ぎではなく、たった5人で一個旅団位の戦闘力がありますが、
そこは所詮一歩兵、おバカぶりにリアリティーがあふれています。


「ソーダむらの村長さん」 2 石川優吾 小学館



セクシーな女体を描かせれば、これほどの高いスキルを持ちながら、
目指すものはいつも「脱力系ギャグ」です。
本人の希望と、読者の希望はいつもかみ合いません。
超僻地(おそらく島根県)の村長になったOLの奮戦記ですが、
たった2巻で完結。おそらく設定の半分も消化していないでしょう。
ギャグは今ひとつで空滑り。
一刻も早く「遊人」や「克亜樹」の様に、
悪魔に魂を売っていただきたいものです。


「蛮勇引力」 1 山口貴由 白泉社



小池一夫「劇画村塾」出身の最終兵器。
数年前、朝日新聞の日曜版に、暫くマンガ評論が載っていたことがあります。
その記念すべき第一回が、この人の「覚悟のススメ」でした。
天下の朝日にして、今ここで評論せねばなるまい!と、おもわしめたのでしょう。
このお話は、「神機力」に支配された「神都」に、ドス一丁の「浪人者・由比正雪」が降り立つところより始まります。
ツッコミどころは、約365ヶ所程ありますが、けっしてツッコンではなりません。
「覚悟のススメ」においては、“右”の人なのかと思ってましたが、これでハッキリとしました。
右系無政府主義者任侠優先」です。
おそらく尊敬する人は「三島由紀夫」でしょう。
日本で最も“身勝手”な、オリジナリティーあふれる作家です。


「刀神妖緋伝」 3 新谷かおる メディアファクトリー



いくらなんでもこの表紙はないですよね。
妖刀「緋女刀」を打つため、犠牲にされた女性の霊がとり憑いた5本の刀、
その契約者として選ばれた女の子を巡る、結構シビアなお話ですが、(ヒカルの碁みたいな
どのページを見ても女の子ばっかしで、きゃぴきゃぴしています。
あぁ、男ばっかしの「エリア88」が懐かしい・・・。
もはや中堅を越え、ベテランの域に達した「新谷かおる」「和田慎二」両氏は、
たとえその絵柄が色あせようと、ストリーテラーとして超一級です。
きっとこれも「超少女明日香」も、あまり先のことは考えないで始められたのだと推測しますが、
引きの強さ、謎の提示の仕方、続きを読みたい!という気にさせるのは流石です。


「ああっ女神さまっ」 23 藤島庚介 講談社



この人は「江川達也」のアシスタントでした。
江川達也は「本宮ひろし」のアシスタントでした。
伝言ゲームを2回しただけで、ここまで大きくベクトルが変わるものでしょうか。
“妹が12人”“先生が5人”“メイドが100人””天使が12人”等の、
高いスキルを持ちながら、さえない男にぞっこん”パターンの、本家本元ですが、
私はこれらを、「亡国漫画」と呼んでおります。←(200万人は敵に回したか?!)
こんなシチュエーションは、この宇宙のどこを探してもあり得ません
ルーツは「うる星やつら」(でもあたるは積極的だった)。
もっとルーツは、「かわいい魔女ジニー」であると断定します。
「文句があるなら買うなよ!」って事ですが、
だって絵が綺麗なんだもーん。


「ピュ〜と吹く!ジャガー」 1 うすた京介 集英社



リコーダーのミュージシャンなんて、4コママンガのひとネタにすぎないものを、
ここまで引っ張れる才能こそ“本物”と判断せざるを得ません。
松本人志が、「アメリカ人を笑わしに行こう」で、アメリカ人を笑わすのには、「70%の力で全力を尽くす
と言ってましたが、まさにそんな感じです。
ジャンプ内においては、このあたりが限界でしょう。
一度「ビーム」や「CUE」で、抑制のない“うすた京介”を見てみたいものです。


「ARMS」 19 皆川亮二 小学館



この巻で、絶対完結だと思ってました。
「アリス」編終了だなんて・・・・・。
ジャンプとは違い、激しいインフレーションを起こしても、あくまで細部まで設定された“小学館的”
枠内には収まってますが、やはりこれも「バカマンガ」(岡田斗司夫談)の一種でしょう。
最初の学園のシーンから、ここまで大きな話になるとは、予定通りと言われても、にわかには信じられません。
また学園生活に戻ってますけど、うそ臭いです。
このまま行くと「ガイバー」か「バスタード」みたくなるんでしょうか。
十数年前に作られた「RED」と言う、神崎将臣制作の実写特撮アマチュアフィルムを見返していたら、
「戦闘員A」 役で、「皆川亮二」の名前を見つけました。
おそらくご本人に間違いないと思われます。

ちなみに、「バカマンガ」は誉め言葉です。