マンガレビュー1月


「女帝 花舞」 10 画 和気一作 作 倉科遼 日本文芸社



新装開店当初、「女帝が置いてないんなら帰る」と言われてショックを受け、
改めて「女帝」がサラリーマン必須図書であることを知りました。
で、苦痛に思いながらも読んでみたのですが、やはり面白いのです。
もっとギスギス、ギトギトした世界を想像していたのですが、
紆余曲折ありながら最後は見事に四方丸く収まるという良い話なのでした。
主人公「彩香」は「うちは日本の女帝になっちゃる!」とか宣言しながら
時々「女帝ってなんじゃろ?」と自問するような天然ボケの入った元気娘なのです。
その娘「明日香」がこの物語の主人公。
母に反発して「母さんが銀座の女帝なら私は祇園の女帝を目指す!」と家を飛び出します。
しかし反発したはずの母の影を追うかのように、同じような試練を受け成長して行くお話し。
大物キャラは引き継がれていますので、スケールは少しアップ。
この原作の方実にキャラ配分や展開が懇切丁寧で、
なるほど出す作品すべて支持を得ているのも納得。
ただ、絵に萌え1ppmも含まれておりません


「バジリスク」 3 画 せがわまさき 作 山田風太郎 講談社



アッパーズ」という本はあまり売れていませんが、
特異な才能を見出すことにかけては業界一かも知れません。
私は基本的にCGを多用した絵は好きくありません。
CG部分は個性がなく、エントロピーが低すぎるので人間には不快なんだろうと思います。
5年10年経ち、技術がその違和感を埋めてしまうと、きっとかなり古臭くなることも欠陥です。
この方の場合、元の絵が有機的で癖が強いため、組み合わせとしてはそんなに悪くないかも・・・。
原作でわかるように忍者物です。
伊賀甲賀10対10の戦いです。
疾走感は初期の「あずみ」なみ、3巻でほとんど死んでます。
異能の者たちの狂宴、娯楽作としては秀逸
甲賀の首領「」様だけ異様に萌えてます。
このタイトル名と箔押ししたことで本棚で目立たず、ブックデザインにやや問題あり。


「夜叉の瞳」 高橋留美子 小学館



この方私と同い年なんですが、最近ちょっと筆圧が落ちたというか、
初期のぶっとい輪郭線が弱くなって、お疲れなのかなあと心配。
出す本すべてハズレなしというすごい経歴の持ち主を、いまさら評論というのもアレなんで、
最近やっとわかった「だっくす」時代の(ぱふの前身)「けもこびる」といPNの謎について、
ここに載ってました。
この本はるーみっくワールドとも言える「人魚シリーズ」の三作目、
初出の「人魚は笑わない」が1984年ですから、10年に一冊ペース。
むしろこちらの方が彼女の本質に近いような気がします。
手塚治虫にも見られるダークな部分は、ギャグ作家において重要な意味を持ちます。


「ヤマト猛る!」 宮下英樹 講談社



どうしても相撲マンガとなるとソップ型が主人公になります。
通はあんこ型の「北の海」みたいな「お前相撲以外に仕事無いやろ
という選ばれし者同士のぶつかり合いを愛でねばなりません。
相撲取りは肉体フォーミュラ−マシンだからです。
バリバリチューニングマシンと戦う「藤原とうふ店の車」というのも
青少年マンガの基本ですが、やや安直ではあります。
しかし、ソップ型もここまで来ると(70kg)絶望的な戦いを強いられるわけで、
絵は迫力のみを主眼に表現されています。
展開があまりに遅いのでいったいいつまで続けるのかと思いましたが、
6巻で燃え尽きたようです。
知ってましたか?ソップ型の代表「旭道山」は「柔道の山下」より一回り大きいことを。


「若草一家でいこう」 画 船戸明里 案 友谷蒼 幻冬舎



えっと、絵です。
絵だけで買いました、他意はないです。
このタイプの違う四人の女の子は宇宙人です。
でもそんなことはまったく無関係でラブコメです。
ゴシックロマン「Under the Rose」がウェブで32P読めます。
続きが読みたいけど本屋にはまず置いていません。
見つけたらきっと買うと思います。


「暁星記」 4 菅原雅雪 講談社



「暁星」とは金星のこと、
少し遠い未来、テラフォーミングされた世界に住む人類の末裔たちのお話。
他の生物が巨大なので、おそらく1/10くらいにダウンサイジングされていると推測されます。
恐ろしく残酷で過酷な生活は、縄文あたりの文明レベルを想起させます。
この前は「牛のおっぱい」というエコロジカルな作品を描いておられましたが、
今ひとつ主張がピンと来ず、それほど話題になることもありませんでした。
エコロジーも突き詰めると「人間は自然が大好きだが、自然は人間の事なんとも思っちゃいない
ことに気付かされるわけで、主張はそのまま、アプローチを変えられたのだと思います。
そういう意味では「玉井雪雄」の「IWAMAL」→「オメガトライブ」の変遷に似ています。
どうしてもまっすぐなエコロジーというものは「愛こそすべて」みたくクサさが漂いますからね。
暁星の自然は人によって造られたものですが、我々も一見安全な街に住みながら
実は過酷な自然の中で生息していることを自覚させようとしています。


「世界一さお師な男 伊達千蔵」 6 高橋ゆたか 集英社



本屋で注文するには勇気がいるタイトルですが、
この人の描くぽってりした女の人が好きです。
どうも江川達也や山本直樹のようなヒップの小さい合わせた腿に隙間があるような
女体は好きくありません。(嗜好ばらしてもしょうがないけど)
魔女娘ビビアン」も俺はアホやと思いながらも買ってました。
それに比べるとヨゴレな感じですが、端正な絵で幸せなセックスを描くこのマンガは
とても癒し系、「島耕作」のように、汚い世界に居ながら決して汚れない理想の男性像、
みんななりたい伊達千蔵。
男とは女に尽くすだけに生まれてきた存在だということを再認識しましょう。


野さん遊ぼう FINAL」 安田弘之 大田出版



ほどよく枯れた絵なので、最初にモーニングで「ショムニ」が始まった時、
えらい老けた新人が出てきたな・・・と思いました。まだ若い方だったんですね。
うらぶれた窓際部署の雰囲気がリアルで、ヲタクとは最も遠い
きっと人生経験の豊富な50代の方と勝手に想像していました。
退職してからマンガ描き始めたみたいな。
人間の観察眼が鋭く、この「野さん・・・」シリーズ三作目にしても、
ごく普通の女の子が何気無いしぐさの中にかもし出すエロティシズムを
ごくフラットな視線から発見して見せるのです。
ある意味「エロティックF」の中で最もエロなマンガと言えるでしょう。
若さが露呈しているのは、各話の間に挿まれた「微妙にやる気のないコスプレ」、
「専用」とか「意味深なオヤジ」とか一発芸としてめっさ笑けます。(なんだヲタクじゃん)
このまま何処へ行くのでしょう、
エロを含んだストーリーか、はたまた新聞のひとコマまんがか・・・
もう一花咲かせそうな予感。
(2001/5初版)