マンガレビュー12月


「ミヨリの森」 小田ひで次 講談社



デビュー作「拡散」はあまりピンと来ませんでした。
海外での受けはよかったようですが、なにか病理的な臭いがして
・・・すこし恐かったせいもありました。
クーの世界」ではすっとぼけた中にも残酷さが滲み出て、その対比が良い味でした。
この少女は本当に今を生きる現代っ子で、
意地悪さも厭世観も、すこしえも入ってリアルで、
そうしてみるとだいぶ治ったのかなという感じです。
でも突拍子も無い形態の森の精霊たちにすこし病痕が見えますけど・・・。
疲れた都会の少女が森に入ることによって癒され、森も癒されるお話。
しかし決して押し付けがましさはありません。
彼女の本質は何も変わることなく、彼女の中の純粋さが自覚できるようになるだけです。
こういうの「ジブリ」の人取り上げてくれないかな。
似合ってると思うんですけど。


「さくらん」 安野モヨコ 講談社



今と違って昔の「春を鬻ぐ女」というのは、それはなものでした。
しかし、そんな限定された人生の中でも女は泣き笑い、恋に身をがすのです。
美しく儚く残酷な「生きているって素晴らしい」この世界。
安野モヨコの描く「戦う女」たちは、7割がた不機嫌です。
でも「ニコリ」と笑ってる時のほうが本当は恐いのですね。
それにしても彼女の守備範囲の広さはどうでしょう。
少女誌、青年誌、おじさん誌、こんな癖の強い絵の人が、
ここまで支持を得るとは思いもしませんでした。
逃げちゃダメだ!!」って教えてくれるからでしょう。(笑)(爆)(爆)


「しあわせエッチ」 田中ユタカ 蒼竜社



体験専門エッチマンガ家です。
鬼畜な表現が多い昨今のエロ業界にあって、合意の上でのセックス以外描かないので
あまり使用に耐えないのか、2年連続確定申告額ゼロだそうです。
女の子の体がやわらかそうで癒されるんですけど・・・。
女性には人気みたいです。
このすこし前、メジャー誌に(といってもアニマルですけど)
愛人(あいれん)」という恥ずかしげなSF(笑)連載されてました。
不治の病に侵された少年にあてがわれた寿命の短い人工生命体「あい」の日常。
どうやら世界も滅びかけているようで、
んー、あきらかに「ヨコハマ買出し紀行」の影響大なんですが、
肝心なところは描かないで行間のみを読ませるという
一見手抜きに見えてじつは大変な構成力の要る作品に挑戦されてました。
「ヨコハマ・・・」が無ければ画期的だったのでしょうが、
私的には「あともうちょっと」という感じで、これからに期待します。
早く納税できるといいですね。(俺もな、とほほ)


「医龍」 5 画 乃木坂太郎 案 永井明 小学館



医者はなんと言っても外科ですな。
泌尿器科とか肛門科とか目じゃないぜ!!
乃木坂太郎」という人はあまり知らないんですが、
こんなシャープな絵のうまい人今まで何処に居たんだろうと検索しても、
サンデーで「キリンジ」という短く打ち切られた作品くらいしか出てきません。
女の子の描線がすごくエロいので、そっち方面の人だったのかなあ・・・・。
組織からはみ出た敏腕外科医が、思惑絡む大学病院に招聘され、
難手術「バチスタ」に挑みます。
本物の医者に言わせれば「なにを大げさな」になるのかも知れませんが、
素人目に見たらこちらのほうが「BJよろ」よりずっとドラマチックで面白いです。
外科と歯科って医者というより職人に近いですからね。


「弾 アモウ」 3 山本貴嗣 蒼竜社



劇画村塾」で高橋留美子と同期の方ですが、
信者というほどでは無いらしく「」は「」に変換されてはおりませン。(笑)
初期の「最終教師」「エルフ17」がOVA化されたくらいで、あまり大ヒットはありません。
絵がちょっと上手過ぎるというのもあるんでしょうが、
最近こういうエロ系統に行かれてはっきり分かりました。
この人のストライクゾーンは「血まみれでいたぶられる女」なのです。
SMでもハードコアな方の「血の滲んだ包帯ボンデージ系」というやつ。
(そんなのがあるんです、「レイ」じゃないよ)
このマンガでもこの女刑事が、蹴られるわ撃たれるわ打たれるわ犯されるわ
そりゃもう痛そうったらありゃしない!
私は退いてしまいました。
ゾーン狭すぎ。


「京都太秦行進曲」 土山しげる リイド社



ザ・ラスト・サムライ」で有名なった太秦(うずまさ)の大部屋俳優
福本清三」さんの懐古録です
なんでハリウッドがこの人選んだのかよくわかります。
この顔は45年の永きに渡り陽の当らぬ「斬られ役」に徹した結果
CGでは作れない本物のサムライ顔として完成したものだからです。
お話は淡々として、なにか大事件が起きるわけではありませんが、
トータルで80へーくらいのみはあります。
人間いろんな経験重ねなくとも、たとえば煎餅焼き一筋60年でも、
なにか悟れるものなんですね。
いつかいい御褒美あるかも知れないし
まじめに生きようよ。