マンガレビュー11月


「IS」 1 六花チヨ 講談社



天下の朝日新聞書評欄に、たまーにマンガが載ってます。
ウルティモスーパースター」とか「黄色い本」とか、絶対にまんが喫茶に仕入れてはならない
格調高い本ばかりです。(笑)
これも取り上げられました。
IS」とは「インターセクシャル」・・・「アンドロギュノス」「半陰陽」のこと。
同人誌の一ジャンルにもされるファンタジックな印象が先行していますが、
実際には生殖能力が無かったり老化が早かったり法律上の扱いなど、
シャレにならないことがこの本で分かります。
彼女とも彼ともつかぬな人々の苦悩を、誠実に描いています。
こういう微妙な問題を、若年層にも訴求できるマンガの力を
あらためて思い知らされました。


「バキ」 20 板垣恵介 秋田書店



なんかえらいことになってます。
って1巻からずっとえらいことになってるんですけど・・・。
この表紙でもそうなんですが、私はこの人の絵が生理的に受けつけず、ずっと無視してまいりました。
店でのあまりの人気に、やはり後学として読むべきと思い手に取りました。
するとやはりと言うか、止まらないんです。
人体解剖学的にも異様なこの絵は、「カイジ」の横顔と同じく
作者の内的な必然性に由来するもので、慣れてしまえばどうと言うものではありません。
バキ」では「プライド」系のリアルファイトが描かれているのですが、
板垣恵介の本質は旧来のプロレスです。
バキ君はこの巻のすこし前になりまして
わざわざ青年誌に「「バキ SAGA」として丸々一巻をようして初体験を描きました。
そこで「格闘とセックスは似ている」と気づくのですが、
じつは逆で、「プロレスがセックスそのもの」だったのです。
どういうことかと申しますと、プロレスファンがのたまうには「相手の技を受けきる」事が重要で、
相手の良いところを引き出し、なお且つそれを倒すことによってより強い自分を演出するのです。
カズノコ天井の猛攻に耐え、我慢して相手をイカすのが男の本懐。
作中のバトルすべてこのルールに則っています。
バキの父ちゃんがすごく嫌な奴に見えるのは、この申し合わせを無視し
ひとり身勝手にバーリトゥードをやってるからですね。
合意のセックスじゃなく強姦なワケです。
だからきっとラストは、父ちゃんに勝つとかそんなことじゃなく
プロレス的バトルの(筋書きのあるドラマ)素晴らしさに目覚めさせることだと思うのです。
ただひとつ問題がありまして、このセクースが同士ということで、
なんとなくホモセクシャルの香りが漂うわけです。
私が生理的に受け付けなかったのはこのあたりではないかと・・・・。


「餓狼伝」 14 画 板垣恵介 作 夢枕獏



原作者が誰であろうと、このマンガは板垣恵介以外の何者でもありません。
これは「ゴースト・イン・ザ・シェル」が士郎正宗ではなく「押井守」の映画であるのと同様で、
自分の性癖に合致したものを持って来たに過ぎません。
一度「谷口ジロー」でマンガ化されていますが、まるで違います。
刀牙」にもこれにも、まぎれも無く「大山倍達;」「アントニオ猪木」がモデルの人物が出てくるのですが、
その扱いが微妙に違うところが面白いです。
で、話は続きですが、この人のマンガが女性にほとんど受けないのは、
男のセックスがその機能としてイカせることに主眼を置いているのに対し、
女性のそれはトータルでの充足を求めることにあるからです。
つまり、毎回イカなくて良いからムード作りも前戯も怠るな、
終わったからってさっさとトイレに立つな、・・・・・って事です。
その辺の詳しいところは「ふたりエッチ」でお学び下さい。


「ZETMAN」 2 桂正和 集英社



これも「「鉄腕バーディー」同様、自身のリメイクです。
元のアメコミ調の短編に、こんな思い入れがあるとは知りませんでした。
バンチ」の編集長が
「桂正和には[I”S]のようなラブコメじゃなくて
電影少女みたいな少し不思議入ったもののほうが本領を発揮する」
と言ってましたが、バンチの編集方針はともかくそれには同意。
(でも[I”S]売れたしなあ)
その欲求不満からか、ずいぶんリキが入っています。)
エッチ度120%UPで女の子以外は劇画調なので同じ作家かと疑うほど。
1、2巻同時発売でようやく2巻最後でZマン登場(でも完全体じゃないみたい)
この調子だと長い話になりそうですが、はたして集英社がそれを許すかどうかが心配
途中で掲載紙が変わったりして。


「娼婦ハルミン物語」 画 水槻れん 作 秋山舞子



少年誌でもなかなか見かけないエッチな表紙です。
娼婦は「さくらん」の方じゃ無くて「エンコー」の方です。
中身は表紙ほどじゃないですが、一昔前の読者が読んだらひっくり返りそうな
しっかり挿入描写です。
内容は軽い気持ちの援助交際、迷い、本物の恋との出会い、性病の恐怖、闇からの脱出
というありきたりな展開なのですけど、
これが近い年齢の女性から語られることが重要で、
おっさんに説教されるよりよほど効果的だと思うわけです。
やっぱりね、セックスは初めて同士がおたおたしながらやるほうが
ずっと感動的だよ。