マンガレビュー12月


「げんしけん」 1 木尾士目 講談社



4年生」「5年生」と、四畳半フォーク的私小説的ノスタルジックマンガ(絵柄も)の方かと
思ってたのですが、正体はこっちの人だったのですね。
げんしけん」とは「現代視覚文化研究会」の略で、「アニ研」「漫研」じゃないぶん
ひねくれ度合いもいっそう上、おそらく作者の実体験に基づいていると思われます。
自戒を込めた青春グラフティー・・・で、「羽生生純」の「恋の門」みたいなお話ですが、
なまじな萌え絵がよけいリアルで痛々しいです。
でもヲタクを否定しているわけではありません。
むしろカミングアウトし易くなった方もいるでしょう。
主人公は大学デビューですが、私なんか25歳デビューですから、ヲタク道に遅すぎることはないと・・・。
(マッドビデオ上映会には、50歳デビューの方がいました)


「青」 1 羽生生純 エンターブレイン



作品に、作者は何らかの形で自己を投影するものですが、この人ほど
色濃く塗りつぶす作家も珍しいです。
南の島に隠居した「元売れっ子漫画家」宅に、「後のない編集者」が
訪ねてくるところから話が始まります。
いきなりヤクザの抗争に巻き込まれ・・・・とにかく意表をつくことだけを
目的に作られたストーリーは、作者のあがきそのものです。
つまり、すべての既成概念を壊す作品を作るための苦しみによって、
自身の内的革命をリアルタイムで見せるという実験的作品。
・・・・・・要するにエヴァと同じコンセプトですね。
すごく面白いです。


「ガンスリンガー・ガール」 1 相田裕 メディアワークス



絵はご覧のとおりギャルゲーCG系萌え絵で、
年端もいかないいたいけ殺し屋少女が銃をぶっ放す・・・という、ありがちな設定なんですが、
もしこの絵でなければちょっと問題になりそうなほどハードボイルドなお話です。
力の無い、ましてや子供に銃器を扱わせることの不条理さを、
身体障害者の孤児を国が買い取り改造した上、薬漬けで感情コントロールする
ってことで解消しているのです。(はヒー)
しかしそんなことより、
冷たい銃に押しつぶされたく硬い胸
の方が気になってしょうがありません。
恐るべし「コミック電撃大王」。


「ヘウレーカ」 岩明均 白泉社



ヘウレーカ」とはアレですね、「ルキメデス」が風呂のこぼれる水から法則を見つけて
そう叫びながら裸で街を走り回ったという「ユリイカ」「ユーレカ」のことですね。
アルキメデスはもうボケかけた爺さんで、紀元前216年のシラクサVSローマ軍の攻防を
街の中の人間模様を加味して描いています。
しかしこの作者の場合、そんな設定は単なるお膳立てに過ぎません。
破壊される人体が描きたい。
いつの時代どの世界を描いても、その無機質な線は背景も人物においても均質で、
いっさいの感情を排しているかに思えます。
切り刻まれた人が「あれっ?」という表情で死に行く姿が特徴。
あずみ」なんかでも同じように人が死にますが、こちらの方がもっとクールで、
一切の痛みを感じません。
このちょっと世間からずれた作者の感覚が、薄気味悪さを醸し出していい感じです


「バイオルミネッセンス」 志摩冬青改め漆原友紀 ラポート



ファンロード」って開くどころか手にすることもまれな雑誌なんですが、
時々すごい人が出てくるのであなどれません
くつぎけんいち」とか「六鹿文彦」とか「おかざき真理」とか、
まさかあの「蟲師」のおどろどろしい漆原さんの本が、よもやラポートから出ていようとは!
開いてみればまぎれも無くあの世界なんですね(まだ少しこぎれいですけど)。
というかこっちの方が新しく見えるのはなぜ・・・。
だからといってファンロードは買いません。


「愛玩少女」 1 刑部真芯 小学館



あまり少女マンガは読んでいませんが、この作品といい「新條まゆ」といい、
最近はポルノブームのようで、じつにあけすけでストレート。
絵的にはそういやらしいというわけではないんですが
こういうのを男の子が読んで、「めちゃくちゃにして」というのが
具体的にどうすればいいか勉強するのもいいでしょう。、
オヤマ菊之助」や「エイケン」に到る「まいっちんぐマチコ先生」からの
連綿と続く男の子エッチマンガの系譜が、いつのまにか女の子の方にも波及したようです。
所詮みんなエッチ好き。


「格闘美神 武龍」 0 1 石川優吾 小学館

 

よいこ」でも少しそっちの方へ行きかけましたが、根っからの格闘技好きのようです。
読者が見たいのは「ダイナマイトバディ」なんですが、ぎりぎり折衷案ということで
これは意外とこの作者に合ってるんじゃないでしょうか。
義務のように入れられる「脱力系ギャグ」もいいんですが、
もっと大きな目標とか謎とか作って、シリアスに展開してみてもいいと思います。
それにしてもこの表紙は見事です。


「ワイルダネス」 2 伊藤明弘 小学館



出自も指向も「田健一」に似かよった氏ですが、
ソノケンが等身の長いリアル絵から線の少ないアニメ絵へ移行したのとは対照的に、
描線の多い劇画調への移行が見られます。
銃器好き、ガンアクション好きは両者に共通ですけど、
よりリアル、悪く言えば地味方向へ突き進んでいます。
お話もハードで複雑、このままだと「ビッグコミックオリジナル」行きですね。
裏表紙でかろうじて踏みとどまっています。


「六本木リサイクルショップ・シーサー」 山本マサユキ 講談社



ガタピシ車でいこう!!」の人ですね。
トンデモリサイクルショップに入社させられてしまった就職浪人のペーソスギャグ
の予定だったと思うのですが、張り切りすぎたのか、はたまた
ペースが掴めなかったのか、「ピース電気店成人版
みたいな話になってしまいました。
無理やりお色気入れるし・・・。
力の無い線といい、(でもパースはしっかり合ってたりする・・・ところどころ)
投げやりな描写といい、これもまた癒し系


「銭花」 1 作 和気一作 画 倉科遼 芳文社



女帝」のコンビですね。(読んでませんが)
これは母の復讐のため、若くして株の世界へ飛び込んだ一人の少女のお話です。
ぱらっとめくっても、背景以外みるべきところの無い下手な絵なんですが、
これが異常に人気があるのです。(特にマンガ喫茶で)
まだまったくの序章ですが、めちゃくちゃ面白い!
これは「山光輝」のマンガと同じ、優れたストーリーには上手すぎる絵など邪魔なのです。
ストーリー重視と絵重視、
マンガは同じに見えてこの二つのジャンルに分かれます。
読み手の層も大きく異なるのですが、マンガ喫茶で読まれるのはこっちの方です。
でもあんまり好きじゃないんです、困ったことに。