11月マンガレビュー


「刑務所の前」 1 花輪和一 小学館



前作「刑務所の中」は近年まれに見る面白さでした。
吾妻ひでお」の失踪マンガも、本人が考えるよりずっと面白いものでした。
やはりドキュメントはいかなる創作にも勝ると言う法則は、いつの時代にも健在です。
しかし本人にとってはそれほど面白くも無いようで、やはり創作がいいらしいです。
そこでこのような不思議な折衷案が生まれました。
いつもの「中世ドロドロ話」に、突然思い出したかのごとく刑務所話。
まるで水と油のはずなんですが、これが悪夢のようで実に良いコントラストを出しています。
こんなすごい才能の人に、木工作業やらしていた司法制度に
疑問を感じてしまいました・・・・・でもはダメですけど。


「SとMの世界」 1 さいとうちほ 角川書店



今でも時々階段を上がるとき、「絶対運命黙示録」を口ずさんでしまいます。
ウテナ」を何度も繰り返し見ていたとき、あの世界に終わりがあることが哀しかった。
夢をもう一度・・・というわけで買いました・・・・幾原カントク裏切るなよ。
タイトルといい・・・・・だいたいこの表紙はなんだ!
男にとってのパンチラをなんと心得おる!それを表紙になんて。
うーん、いきなり一巻で挿入寸前
いや、先っちょ入ってるのか・・・・ハァハァ。
たしかに、この絵をを動かしたらまたすごいでしょうね。
いつのまにか「さいとうちほ」がフツーに読めるようになった自分が恐い。


「HEXAMIX・へクサミックス」 櫻見弘樹 大都社



この方まったく存じなかったのですが、中身を見ると覚えがあります。
しかしあまりにバラエティーに富んでいるため、同一人物とは思いませんでした。
本人も試行錯誤を繰り返しているそうで、・・・・・・・こういうのは
絵が上手いからこそできる事であって、そういう意味で言うと
・・・・悪いですが、こないだの篠房六郎のように「器用貧乏」の危険性もあります。
遊人」や「克亜樹」みたく、自分のを見つけるまで(笑)たっぷり
時間をかけてしまうかもしれませんね。
シャ−プな線を生かしたアクションものが個人的には好きです。


「ハッピーエンド」 ジョージ朝倉 講談社 



やっと見つけました。
これであと未入手は「カラオケバカ一代」だけです。(マジかこのタイトル)
完全な創作ではなく、自伝的要素の強い作品で、ほんの些細なエピソードや
そのときの心情描写にリアリティーを感じます。
さくらももこ」なんかもそうですが、女性って本当に記憶力がいいですね。
客観的に見れば、ここに出て来る人たちみんな傷ついていてタイヘなんですけど
何とはなしに最後は救われるわけです。
それは何かが劇的に変わったんじゃなく、結局は本人の気持ち次第なのですが・・・。
まさにこの「ハッピーエンド」こそこの作家のテーマで、
似たような絵柄の作家との決定的なになっています。


「ティンティン」 1 松本花 新書館



どこか南の島の双子の神様のお話です。
神や精霊、魔が同じ描線で描かれており、少し混乱しますが
この世界に入り込めればまさに癒し系ですね。
ただこういう神が身近に居る世界と言うのは、それだけ

も身近にあると言うことです。
諦観こそがパラダイスへの近道。
そこはかとないの静寂を読み取りましょう。


「サブリーズ」 羽生生純 エンターブレイン



のっけから40Pで終わらせるには惜しいトンデモエピソードから導入です。
ストーリーはいわば「事件記者コルチャック」なんですけど、もっとムチャクチャです。
この作家の性癖を知っていれば問題ないですが、知らなければ大混乱すること請け合い。
なんでたった1巻しかないのか・・・・。
この人の場合、雑誌に合わせて描くことは不可能で、
載せる雑誌自体を合わせることが強要されます。
ゆえにヴィレヴァン(笑)以外での入手を困難にしています。


「ノージルV」 福原鉄平 幻冬社



前の岡山に店には、「福原」と言う名の愛すべき変人が居ました。マンガ
(地球防衛軍18年の歴史でもベスト3・・・・いや岡山でベスト10)
その社会不適合な(笑)感性を何とか生かせないものかと、
みんなで雑誌投稿用マンガをあれこれアドバイスして描いてもらいましたが、
結局素人編集者ではコントロールしきれなく、変てこな作品になりました。
奇しくも、同じ「福原」という苗字のこの方に、求めた答えを見つけた気がします。
ネーミング、デザイン、ストーリーすべてが好い加減にヘンです。
レトロで自分勝手な感性は、マンガの技術論をすべて無効化する力があります。
でもやはり売れないでしょう。
求める先がここでは、ペンで飯を食うのは難しい。
私としてはこのような作家が食っていける(失礼)世界こそが理想なんですけど・・・・。


「天国に結ぶ戀」 大越孝太郎 青林堂



この二人は兄弟で、くっついているのはシャム双生児だからです。
時代は大正、あまりに過酷な運命が二人を苛みます。
しかし、インモラルな物語に感じてしまうエロティシズムに、酩酊感を覚えます。
ドラスティックな物語のためには、ここまで踏み込む必要もあるのでしょう。
こういうかたわ者の話を描けるのが、ガロガロたる所以です。
そういう部分で、数十年も前から風前の灯の青林堂には、社会的存在意義があるのです。
惜しむらくは「第一部終了」。
はたしてこの物語に続きは描けるのか。
1100円ですが、買って損は無し。

それにしても今月は濃すぎたかな