8月マンガレビュー

(今月はこれといった物がなかったので、今まで買いもらしていた作品をまとめてお届けします)


「道草の日」 小沢真理 集英社 2000/6



これははっきり言って知りませんでした。
掲載誌が「コーラス」ですからね。
表紙とパラッとめくった絵が今はなき()「高野文子」っぽいなと思ったのですが、
だまされました・・・・すごく恐い話です。
乾いた淡々とした絵で思いがけない展開をされますと、
次にどんな恐い目に遭わされるかと心配になります。
短編3本目なんかホラーでもなんでもないのですが、
「どっかに死体が埋まってるんじゃないか」と勝手に勘ぐってしまいました。


「カウンタック」 岡崎武士 学研 1996/2



現在はイラストレーターとして有名ですが、こうして古い作品を読み返すと
絵の変遷に驚かされます。
これほど落差がある人もめずらしいからです。
長期の連載作品においては、作者の技術的進歩が取り沙汰される事もよくあるのですが、
この人の場合上手いヘタではなく、というか萌えというか
瞳に命がこもるというか、情念の部分の進歩が著しいのです。
掲載誌「NORA」は読んでいたのですが、初期の“そつのないよくある上手い絵”のため
ほとんど印象に残っていませんでした。
この本のような、いかにもレデースコミックっぽいものと「精霊使い」の落差もスゴイですし、
今マンガを描かせたらどうなるのか・・・・見てみたいです。


「うそつきな唇」 一条ゆかり 集英社 1994/3



この方は今も昔も変わらず上手い絵です(技術的な流行の違いだけ)。
大きく変わったのは、彼女の恋愛対象がおじさんから少年に移ったこと。
これを描かれているときの年齢は、ちょうど今の私くらいでしょうか。
同年齢の女性がどんな恋愛観なのか、これはどの年代においても永遠の謎だとは思いますが、
欲望に正直であることだけは確かですね。
この頃の作品と比べると、むしろ今の方が若返ったかのような印象を受けます。
おそらく開き直ったのでは・・・・。
そう見ると作者は、この時微妙なお年頃だったのではないでしょうか。
するといずれはショタに趨ることになるのでは・・・。


「エリックにあいさつ」 もみじ拓 講談社 1992/10



意味のない音の羅列を声に出してみましょう。
おそらく5秒も続かないはず。
人は「もみじ拓」を読むとき、その中に何らかの暗喩や示唆を見つけようとします。
いや、そうせざるを得ない。
でもそんなものどこにもない。
この本の内容を説明することは、地上の誰にも不可能です。
これは努力してとどく境地ではありません。
芸としては「村上ショージ」の2ランク上といったところ。
きっとロールシャッハテストをしても、何一つ私と同じ答えにはならないでしょう。
まごうかたなき天才・・・いや天然・・・・少し恐い。


「カメレオン・アーミー」 安野モヨコ 1999/5



安野モヨコはワザと無視しておりました。
先入観に過ぎないのですが、「岡崎京子」の二番煎じに思えたからです。
岡崎京子も、二度にわたって全巻買い揃えるほどのデビュー以来のファンだったのですが、
ある日を境に嫌いになってしまいました。
それは「カネコアツシ」や「松本大洋」や「やまだないと」なんかを好む女子高生は、
よく万引きする事に気付いた時からです。
これは、「ユーミンの音楽が嫌いじゃなくて、ユーミンを好きな“お局様”が嫌いだからユーミンが嫌い−OL理論」
と同じく、嫌な思い出からこのジャンル(と勝手に思っている)を嫌いになってしまったのです。
この歳になって「マンガの持つ影響力」に考えが及びました。
岡崎京子との違いは、岡崎が「いつもいいかげん」なのに対して「いつも怒っている」ところです。
(とは言えこの人も同じく、ワク線は少しいいかげん)
ご本人はふっくらとした美人なのにねえ。
この頃はとんがっていたのでしょうか。
痛々しい苦悩が見え隠れしています。


「好きになるひと」 高橋しん 小学館 2000/2



これを買わなかったのは、「暴挙」にしか思えなかったからです。
昔の作品を、全編にわたり描き直すなんて正気の沙汰とは思えません。
とても元の作品より良くなるとは考えられなかったからです。
でもこうして時間をおいてみると悪くはありません、というより初見の人にはこっちの方が良いかも。
(少なくとも鶴田謙二に爪の垢煎じて飲ませたい)
本当にこの作者は「いいひと」です。
あとはどーんとエロマンガを描いていただくことだけですね。
それも出来るだけ下品目の雑誌に。
きっと何人かのエロマンガ家は、自信をなくして筆を折るでしょう。


「おとなのしくみ」 3 鈴木みそ エンターブレイン 2000/12 



レポートマンガはギャグマンガ家の鬼門です。
今まで何人もの方が輝きを失う原因となりました。
これは、「いかなる創作も現実の前にはむなしい」という法則に飲み込まれたものと推測します。
この方はそれを知った上で、あえてイバラの道を選んでいるかのように思えてなりません。
覚悟完了」ですか、このままカタギのマンガ家に戻ることはないでしょうし、
なん十万部売れて“印税うはうは”ということもあり得ないでしょう。
それゆえ踏み込みは深く、差し違えすら辞さない意気込みを感じます。
いつか刺されそう。
でも本当に勉強になります。
一人マンガ2CH