マンガレビュー2月

黄色い本」 高野文子 



永く永く待ちました。
私が勝手に天才と呼ぶ3人の内、現存する(?)ひとり。
表紙も素っ気なく、中身もサラッと読んでしまえばそれまでです。
ところが、あるひとコマにちょっとでも引っかかってしまうと、前のコマへ、前のページへと
「これは何を表しているのか」を探る旅が始まります。
一筋縄ではいかない迷宮のような本です。
あらゆる表現を求めた末にたどり着いた、極点のようだとも言えます
ノスタルジックな癒し系なんて、
迂闊な評論をあざ笑う、とても怖い本です。


「THE WORLD」 1 獣木野生 新書館



伸たまき」からの改名後、初めての新作です。
というより、「パームシリーズ」以外のお話は初めて見ました。
P・Nからもその指向性がうかがわれますが、人と自然の関係について、
もう一歩踏み込んだテーマを選択された様に思います。
この方向は、少し間違うと危ない思想や宗教にたどり着くことも多いのですが、
これを読む限り、押しつけがましさや偏った思想は感じられません。
この巻では、白と黒の狼の神(精霊?)が主役ですが、推測するに
これは大きな複雑な物語の一部ではないでしょうか。
前作「パーム」の様に、パッチワークの断片の如く一つ一つの物語を
積み上げて行く手法ではないかと思います。
(山田ミネコのハルマゲドンシリーズのような)
この作家を支える雑誌が潰れないことを祈るばかり。


「時の添乗員」 1 岡崎二郎 小学館



よくもまあこんなに泣けるお話を次々思いつくものです。
一つの架空の設定から、感動を生むシチュエーションを創り出す、
これこそがまさにSFの真骨頂
お話は、時の旅をガイドする添乗員が、それぞれの人のキーポイントとなる時点にガイドして
「あの時こうしていれば」という思いを解決してゆく、というものです。
はたしてこのタイムマシーンを与えたのは誰なのか、きっと
細かい設定もあることとは思いますが、それは大した問題ではないでしょう。
人生をやり直したいと誰もが一度は思う気持ちを、素直にかなえるお話です。


「ES」 1  「太陽のイヂワル」 惣領冬実 講談社

 

まぎれもなく女性のはずですが、あまりに理知的
理科系の男性ではないかと思いたくなる作家です。(これはセクハラ発言?)
ES」の方は、人の脳に直接アクセスして記憶を改竄する「能力者」のお話。
もしこんなのがホントにいたら恐ろしい話ですが、彼はそれで人類をどうこうしようと言う気はありません。
傍観者では無く、導者でも無い、善悪の基準は人を超越しています。
第一作はパイロット版で、読み切りのはずだったでしょう。
個人的には、謎解きなどせずこのまま連作の方が良かった気がします。
しかしそのあまりの面白さ、切り口の鋭さ、画力、全て驚きだったので連載とあいなったのでしょう。
太陽のイヂワル」は、男性誌に発表された短編集です。
中の一作「奇妙な遺伝子」など、一歩間違えば「山岸涼子」になりかねないところですが、
やはりこれも切り口が斬新です。
女性ならこの作家ベテランとしてご存知の事かと思いますが、
ようやく男性読者も発見した、という感じでしょう。


「幽形聖境クークラ」 1 画 御船麻砥 作 田沢孔治 講談社



正直に申しまして、絵だけに惹かれて買いました。
色の使い方、クリーチャーや女の子のキャラクター、一流です。
ところがやはりというか、「絵の上手い人は読みにくい」の法則通り、
各登場人物の心理描写がよく解りません。
せっかく東欧の架空の街が事細かに設定してあるのに、それを生かし切っているとは言えません。
こういう凝った細部にこだわる人達は、変わり者・・・・もとい、ユニークな発想の持ち主ではあるようです。
この巻で決着したように見えるのですが、まだ続いているようです。
ファンタジー好きには、はまれるものがあるかも。


「美味しんぼ」 61 画 花咲アキラ 作 雁屋哲 小学館



この作品と共にバブルは始まり、そして崩壊しようとも
」至上主義のこの新聞社の方々は、浮き世離れした生活を送ってらっしゃいます。
結婚し、子供も産まれ、山岡は何にこだわって雄山と諍うのか、もはや理由も希薄です。
いったいどこまで続くか「究極のメニュー」、出来上がる頃にはまたバブルが来てたりして。
原作者「雁屋哲」は、日本古来の伝統文化大好き右人間かと思いきや、
日本のタブー「天皇制」批判本を出されたりしています。
「男組」なのに不思議、思ったよりリベラルな方のようです。
グルメマンガの始祖にして、いまだにこれがトップなのも
食材描写にかけてはNO,1であり続けるからでしょう。


「黒色ロリータ」 岡田ユキオ リイド社



表紙とタイトルだけ見ると、その手エッチ系本みたいですが、違います
オカルチックなホラーは、この人の画風に合っており、一つの道を見つけたかなと思うのですが
読者アンケートはどの辺なのでしょう。
日本初の「パンクマンガ」でデビューし、独自の線を追求されていますが、
一番問題は女の子に色気がないことですね。
いっそドール系の方に行かれてはどうなのでしょう。
原作付きでサラリーマンマンガなど描かれると、少し悲しい気分になります。
表題作以外にも、探偵ものやSFなどいろんなジャンルの短編が収録されています。
しかしいずれにも、今や懐かしき「パンク」の香りがいたします。


「グローバルガーデン」 1 日渡早記 白泉社



考えればこの人の描くものは、ほとんどが少女マンガではタブーとされたSFです。
良い時代になったものですが、そんなジャンル分けをものともしない独自の発想力は、さすがと言うばかり。
謎とされるアインシュタイン最後の言葉、相対性理論、これらから
このような物語が紡ぎ出されるのは、
男性の目から見て思いもよらぬ驚きです。
前々作、「未来のうてな」においても、時間軸に対する独自の捉え方には
素直に感心させていただきました。
理論思考によらず、直感からのささやきを物語にしたためる。
女性だからこその所以だと思います。
(これもセクハラ?)