マンガレビュー1月
「死神の惑星」 3 明智抄 集英社



表紙の少女マンガマンガした絵に騙されてはいけません。
男には絶対描けない残酷なお話です。
この巻で最終巻ですが、込められたSF的アイデアもさることながら、ゆうに10巻分以上の読後感はあります。
実は10/30発売なのですが、本屋で見つからない事この上なし。
もっと注目されてもいい人だと思います。
辺境惑星「グラーシス」をめぐる人間模様、ただそこに登場するキャラクターの設定は
一人一人で一本描けそうな程奥深いものです。
ハードSFマニアの男性にはツッコミどころも多いでしょうが、
「山田ミネコ」「佐藤史生」同様、SFとは哲学であるを体現しています。


「ふたつのスピカ」 1 柿沼行 メディアファクトリー



上とは異なり男性のSFですが、実に叙情的、リリカルな作品です。
最近同時多発的に発生した宇宙開発ものとも言えますけど、
切り口が新鮮、ちっちゃい女の子の成長を描くファンタジーとも言えます。
作者はこれがデビュー作、読み切りのつもりが読者の反響が大きく、
一気に連載を勝ち取りました。
「ベルセルク」も最初はそうだったので、上手く育てば感動大作になるかも・・・・。
フラッパー編集部の力量が試されます。


「クレイモア」 1 八木教広 集英社



「クレイモア」とは大剣のこと、
女版ベルセルクと言ったらみもふたもないですね。
この一巻で取り上げるのは間違いだったかも知れません。
現時点ではそう思われても仕方ないことでしょう、今後の展開に期待。
妖魔とは、クレイモアの組織とは、少女の過去は、謎は多いです。
決め絵や表紙にはいつもはっとさせられます
ギャグからシリアスへ、絵柄が合いすぎていて恐いです。どちらが本性でしょう。
意図したものでしょうが、人物の描線を極力減らした絵は、
一見手抜きに見られてしまう危険があります。


「リバーブ」 美樹本晴彦 角川書店



美樹本晴彦と言えば消え入りそうな女の子ばかり出てきますが、
この娘はホントに消えちゃいます。
その正体を「幽霊」と言ってしまうと、これまたみもふたもありません。
様々な人生を傍観する、超越した存在はよくある設定ですが、
この少女は積極的に関わって来ます。かすかな記憶だけを残して
が、この少女が何者であるかは大した問題ではないでしょう。
なぜこの物語を作ったか、舞台設定など、作者は解説ですべてネタばらしをしてしまっています。
それでもこの世界が色褪せないのは、さすがという他ありません。
マンガ詩人と呼びましょう。


「働き者がばかをみる」 真右衛門 竹書房



とてもリズミカルなギャグ4コマで,「抜き」の切れ味抜群です。
キャラクターはみごとに記号化されており、特に「目」は3種類しかありません。
1,魂の抜けた点目
2,魂の消え去ったうつろ目
3,魂の飛んだ驚き目
この3種だけで、全てのシチュエーションを描き分けるところがすごい。
表紙の露出度の高いおねいさんは、本編とはなんの関係もありません。
これは表紙だけで売ろうとする一部のエッチ本に対するパロディなのか。
深読みも表層読みも可能です。


「楽園夢幻綺譚 ガディスランギ」 深谷陽 リイド社



この人は「エデンの東北」の深谷かほるの実弟です。
と言うことは、あの可愛い「あーくん」なワケですよね。
汚れちまったんだ、時間は無常です。
作品のほとんどが「バリ島」あたりの貧乏旅行者のお話で、実体験に基づいたものでしょう。
この作品のような民族伝承ホラーは、諸星大二郎の独壇場でした。
ラリりながらの放浪体験は、無駄ではなかった様です。
お姉さんのアシスタント歴は長いでしょうから、絵的にはかなりの影響が見られますが、
ずいぶん上手くなって、独自の世界を築きつつあるようです。
でもお姉さんには「まだまだだっぺ、アーくん、こんなんじゃよー」とか言われてるんでしょうか。


「シリウスの痕」 4 高田慎一郎 角川書店



完結です。ですが、この作品で何が言いたかったか釈然としません。
すごく要約すると「サイボーグの少女が肉体を取り戻す話」ですが、
あまりに多くのSF的設定がちりばめられていながら、そのほとんどが未消化。不思議な読後感です。
キャラクターの見分けがつきにくく、特にある一定年齢以下の少年少女は
まるっきりドールのようです。
思うに、まず描きたい構図やキャラクターありきで、ストーリーは後付けなのでしょう。
この点においては、鬼頭莫宏「なるたる」と同様、マリオネットコンプレックスの匂いがします。
しかしながら、無機質なドールボディーに色気を感じてしまう
この感覚はなんなのでしょう。


「ラーゼフォン」 1 画 百瀬武昭 作 BONES 出渕裕 小学館



前作「マイアミ・ガンズ」から2年半、萌えのある絵もギャグもアニメも人気があったはずですが、
なぜか長いブランクがありました。
今回のお仕事、HPでもそれほど乗り気な感じではなく少々心配でしたが、
要らぬお世話でした。百武節全開、絵もギャグも冴えわたっています。
特にややこしいブチメカも、完全に自分の物にされているようです。
お話全体としては、やはり「エヴァ症候群」から脱却できていない気がします。
それが意図したものなのか、解りません。
かわいい女の子がいっぱい出てくりゃ私的にはOK ですけど・・・・。


「恋の門」 5 羽生生純 エンターブレイン



これも完結です。
迷走を続けた歪んだ恋の行方も、あっけないほど綺麗に決着しました。
ざらついた絵柄もストーリーも、とても荒んだ気持にされたものですが、
この作者はけっして壊れていない
とてもいい人だったんだなと見直しました。
少し安らぎました。