やましろ風土記(その2)

甘南備山

 

〜 か ん な び や ま 〜

(京都府京田辺市)

身 近 に あ る 霊 山

 

 山城の地に住んでいる人でも「かんなびやま」という山の名を聞くことは稀です。

生駒山山系の北端に位置し、田辺市(京都府)と枚方市(大阪府)に跨る甘南備山(標高217m)。

おそらく地元京田辺市の人達と山登り愛好家の方くらいではないでしょうか?

めぼしい名跡や祭りもない為にマスコミに取り上げられることも殆どありません。

 しかしその歴史は古く、上古から「神の依りつく山」として山自体が信仰の対象となっておりました。

また平安京造営時には北の船岡山とこの山とを結んだ線を基線として朱雀大路を設定したと言われます。

そんな隠れた霊山も今では市や氏子さん達の手によって登山道や展望台等が整備され手軽にハイキングできる山として地元の人達に愛されています。

今回は地味ですがそれなりの味わいのある「甘南備山」を紹介します。

 

 ・・・で、ここから先は舞台訪問ネタになります。

 「木幡物件」にある【AIR】(ゲーム・アニメ)という作品の中で、物語のバックボーンとして1000年前の平安時代の話が語られます(SUMMER編と言います)、その中のヒロインとして登場する翼人・神奈備命(かんなびのみこと)の名前のモデルとなったのが甘南備山の山頂にある神奈備神社ではないかと言われています。

とは言え、名前だけでゲームやアニメで使われた背景には一切出てきませんので、ここは風土記の扱いで紹介します。(まあ、それなりに舞台訪問の考証は入りますが・・・)

甘南備山全景

 宇治市方向から生駒の山々を眺めました。

矢印がある手前の峰が甘南備山です。(わかりやすい様に輪郭を白く加工しています)

 217mというさほど高くはない山ですが生駒山系の最北端の位置取りと、尖った峰が目立ちます。

甘南備山登山口登り口2

 

 

 

 

登山口です。20台くらいは停められる駐車場もあります。

詳しい位置はこちらを参照下さい。(十字の位置が駐車場です)

 市街地に近いですが田畑を抜けた奥まった所にあるのでおそらくかなり迷う事になると思います。基本的には「ため池に出れば川の右側の道を遡上し、二股の場所で川と分かれて上に向かう」でたどり着けるかと・・・。

 あと、道は舗装されてますが車1台がやっとの農道ですのでお気を付けて・・・。

 

ここのすぐ上に車止めがあるので、駐車場に車を停めてここからは歩きになります。

登山道

 

 

 ちょっと見難いですが、登山道は複数のルートが良く整備されています。

 また山頂までは舗装された管理用道路が通っておりこちらを使えば汚れたりせずに一気に上まで行くことができます。

 勾配は比較的ありますが、どのルートを使っても大人で30〜50分程度で山頂に到着できます。地元の人は散歩がてら登ってくる人も多いようです。

池

 

 

 8合目付近に作られた防火用水用の人工池。

立派なトイレも作られており、山頂を前にしてのいっぷく所。

 管理道路上にはこの他に3合目付近にも公園があります。

採石禁止?

 

 

 管理道路の7合目付近にある看板。

このコンクリート上の山肌には石を取ったり、穴を掘った様な跡が開いています。

 盆栽用の採石?それとも化石でも出るのでしょうか?

展望台展望台からの眺め

 

 

 

 山頂の手前、東側に延びた鞍部には展望台が設けてあります。

脇にはソメイヨシノも植えられており、桜の時期には結構な眺めになったものかと思われます。

 

 

 

 

 こちらは展望台の上から宇治・城陽方向(北東)を眺めます。

この時点で、朝の6時くらいのため朝靄に煙って遠くが見えません。

また残念ながらここからでは京の都を見るのは少し難しいようです。

神奈備神社入り口神奈備神社社殿神奈備神社境内神奈備神社縁起

 

 

 展望台から少し戻って、尾根づたいに登れば山頂部を護持する様に神奈備神社があります。

 鳥居横の縁起によれば平安時代の西暦976年に施行された「延喜式」にも甘南備神社として神格が記してあるそうですが、社殿は小さな社がひっそりと鎮座しているだけです。もちろん無人で、神職は麓におられるようです。

 神域は頭頂部の周囲100mほどで、社殿の後背地が5m位高くなっておりそこが山頂のようです。

 静かな森にひっそりと息を潜めている様な神社ですが、参拝する人は結構あるようです。私が訪れたのは日曜日の早朝6時半にもかかわらず数名の方が入れかわりにお参りされていました。

 

 さてここで【AIR】に話を戻してみます。

SUMMER編で語られる背中に翼を持ち人智を越えた知恵と神通力を持つ翼人。

その最後の翼人・神奈備命(以後、神奈)と守護の命を受けた衛士・柳也そして神奈付きの女官・裏葉の3人が出会うのが神奈を軟禁する為に山深い山中に設けられた「社」となっています。

 時に「正歴5年の夏」、西暦994年という設定です。

 つまり甘南備神社はこの時には既に存在していることになります。

 

 

(←画像をクリックして下さい。大きな画像に変わります。)

鳥居前

 

 

 鳥居前の広場より南東の方向を撮しました。

神奈が軟禁されていた「社」は、

1 都の南

2 山深い土地の山中

3 海からは遠い

4 「社」から山伝いに南に数十日行けば、高野山(金剛)に至る。

・・・の条件が示されています。

この中で甘南備山は2項以外は合致します。

(4項も、真南に生駒山系〜葛城山系〜吉野川〜吉野山系と山伝いに高野に向かえます)

やはりこの地が名前以外にも場所の想定に使われた可能性は高いと思います。

甘南備寺

 

 

 

 神奈備神社の一段下の谷間に甘南備寺の跡地があります。

奈良時代より密教の寺としてこの地にあったと記してあります。

ただ残念ながら「天台宗系の寺院」となっており、これが真言密教の寺ならSUMMER編で翼人を封じようとする高野山との繋がりを補強する設定とできたのですが・・・。(苦笑

 

 

(←画像をクリックして下さい。大きな画像に変わります。)

 

 

え〜〜〜、神社から寺跡に向かう山道です。

(海は見えませんが、ゲーム版で神社に向かう参道ってこんな感じだなあ〜と・・・)

   

まとめ

 

 【AIR】の話は別にしても、登って降りても1時間ちょっとなら小さな子供連れでも気軽に行けるハイキングコースと言えます。

 住宅街が近くに迫ってはいますが周囲はまだまだ山林や田園風景が広がっており山の歴史に思いを馳せるのも一興だと思います。

 

 

 


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